槙原氏が分析 田中の自信を揺るがせた寺内のスプリット打ち

[ 2013年11月3日 10:48 ]

<楽・巨>5回1死一、三塁、重盗が見破られ三走寺内がタッチアウトに

日本シリーズ 巨人4-2楽天

(11月2日 Kスタ宮城)
 巨人の伏兵・寺内の一打が田中の不敗神話を止めた。巨人が逆王手をかけた日本シリーズの第6戦。本紙評論家の槙原寛己氏(50)は、逆転した5回に寺内が田中のスプリットを打った一撃が最大の勝因と指摘した。完璧なコースに来た決め球を打ち、スプリットへの自信を揺るがしたことで高橋由の決勝打が生まれたと分析。巨人が絶対的なエース・田中を攻略し、3勝3敗で両軍とも総力戦となる第7戦は継投が勝負を分ける。

 巨人打線にとって、とにかく邪魔になっていたのが田中のスプリットだった。攻略には避けて通れない球。その決め球への田中の自信を寺内の一打が揺るがした。

 ◆5回、寺内が田中のスプリットを右前打 この回、1死二塁からロペスが放った左翼への同点2ランはスプリット。ただ、高めに浮いた投げ損ないだった。高めは変化が鈍く、その分だけ捉えられた一打。こういうミスは本格派投手に仕方ない部分があり、気持ちは容易に立て直せる。しかし、続く寺内の右前打は田中にとって相当ショックだったはずだ。

 2ストライクからの3球目のスプリットは外角のストライクからボールになるコースへ来た。それまで全員空振りしていた球だ。それを右方向へ完璧に打った。田中にすれば、ロペスの同点弾で「しまった」と思った直後、いいコースへ「決まった」と思った球を予想外に痛打された。動揺は明らかで、あの一打が田中を力ませた。

 今季の田中は力まないで投げて勝ってきた。力を抜くことを覚えて開幕から26連勝。この日も状態は悪くなかった。それが力みによって直球が浮き、スプリットもワンバウンドするから投げづらくなっていた。寺内の一打の後、長野は初球の直球を左前へ。代打・亀井もワンバウンドするスプリットを見極めて四球。一、三塁からの重盗は失敗したが、高橋由は3球続いた直球を狙いすまして中前打だ。捕手の嶋も直球で行かざるを得なくなった配球で、寺内の一打が田中のスプリットへの自信を揺るがせたことが生んだ決勝点だった。

 おそらくロペスの同点弾までだったら、田中は立ち直れただろう。巨人打線は追い込まれてスプリットが来る前に打つという意識で、早いカウントから打ってきた。それに対して田中はスプリットを多投。それを特に左打者がことごとく空振りし、4回までは攻略の糸口すら見えなかった。そんな中で寺内がスプリットを捉えた右前打は、田中を「神の子」でなくす一打だった。

 ◆決まらないフォークを捨てて立ち直った巨人・菅野 序盤の菅野はフォークがことごとくワンバウンドになって苦しんだ。初回から打者7人のうち、実に6人までがフルカウント。2回は1死から枡田に四球、続く松井にフォークが決まらないのを見透かされ、フルカウントからスライダーを狙い打たれた。この右翼線二塁打が響いて2失点。田中相手に与えてはいけない先制点を失ってしまったが、そこからの修正が見事だった。

 捕手・阿部のリードもあるだろう。決まらないフォークを捨て、縦のカーブを有効に使い、直球とスライダー、シュートで組み立て直した。3回以降はリズムに乗り、逆転してもらった5回1死二塁のピンチも岡島をスライダーで、藤田は直球でともに左飛。広島・前田健と投げ合って勝った10月17日のCSファイナルS第2戦でも有効だったフォークが使えなくなりながら、よくぞ立ち直った。王手をかけられた試合で田中が相手。プレッシャーは計り知れなかったはずだ。その全てをはねのけた菅野。新人ながら引き出しが多く、修正能力が高い。前田健にリベンジしたように、同じ投手に2度は負けない理由がそこにある。

 この大一番で田中相手にも第2戦のリベンジを果たした。菅野の潜在能力が崖っ縁の巨人を救ったと言っていい。

 ◆田中を攻略した巨人と田中で負けた楽天 3勝3敗で迎える第7戦はともに総力戦になるのは間違いない。ただ、追い詰められ、開き直って田中を攻略した巨人のこの1勝は大きい。不振カルテットの阿部、坂本、高橋由、ロペスが田中からヒットを打った。これで打線に不安がなくなって最終決戦に臨める。

 勝負を分けるのは継投だろう。先発は第3戦でKOされた巨人・杉内と好投した楽天・美馬。巨人はもし杉内の状態が良くないと見れば、早い回からリリーフ陣をつぎ込んでくる。対して楽天は美馬がある程度のイニングを投げないと、リリーフ陣に不安があるだけに苦しい。場合によって第5戦に救援した則本の投入もあり得る。ただ、則本は救援で5回を投げてから中2日。星野、原両監督の継投のタイミングがポイントになる。

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2013年11月3日のニュース