観戦4戦目アストリットさん「世界中で一番幸せなお母さん」

[ 2013年9月16日 06:00 ]

<ヤ・神>母・アストリットさん(右)から祝福のキスを受けるヤクルト・バレンティン

セ・リーグ ヤクルト9-0阪神

(9月15日 神宮)
 快挙を達成した試合後のお立ち台。バレンティンの隣に最愛の母も一緒に上がった。オランダのアムステルダムから来日しているアストリットさん(64)は、愛息の左頬に3秒間、熱いキスをして祝福した。おでこへのキスで返されると、母子で記念撮影に応じた。左手には57号本塁打の記念ボールを大事そうに握りしめていた。

 「私は世界中で一番幸せなお母さんです。本当に神様にはこういう素晴らしい息子を私に預けてくれて感謝しています。(息子は)本当に私にとって全てです」

 出身のキュラソー島の地域の旗=写真=と同じ青と黄色の服を着て、バックネット裏から歴史的瞬間を見届けた。56号の打球が左中間スタンドに吸い込まれると、知人と抱き合って満面の笑みを浮かべた。バレンティンが記念の花束を自分に向けて高々と掲げると、高揚する気持ちを抑えきれず、息子のお面型うちわを手に「歓喜の踊り」を披露した。試合後の記者会見場でも隣の席に座って温かいまなざしを送り、時折、目を潤ませた。

 離れていても常に息子をサポートしてきた。バレンティンが3歳の時に離婚し、14歳の時にオランダ領キュラソー島から仕事でアムステルダムに移り住むことになった。野球をやるために残った息子と離れ離れになったが「一番を目指しなさい」とエールを送った。3年前に息子が日本で野球をやる決断をしたときには「あなたなら大丈夫。一生懸命やりなさい」と背中を押した。今でも週2回は欠かさず連絡を取り、異国で奮闘する息子の心を癒やしている。

 12日にオランダから初来日した際には、プロ野球タイ記録となる55号アーチに1日間に合わず「何で私を待たなかったの」と怒って鼓舞した。同日から4戦連続で観戦し、この日は「神のご加護があるから大丈夫よ」と送り出した。「人生で一番のプレゼントをしたい」と意気込んでいた息子から受け取った最高の「親孝行」。今季終了まで日本に滞在してビジターにも足を運び、息子の記録更新を支えていく。

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