マー君 開幕19連勝 “名付け親”ノムさん「もう近寄れない」

[ 2013年8月31日 06:00 ]

<ソ・楽>7回2死、田上に左翼線二塁打を打たれ悔しがる田中

パ・リーグ 楽天11-6ソフトバンク

(8月30日 ヤフオクD)
 マー君が世界記録だ、そして神様にあと1つ。楽天・田中将大投手(24)が30日、ソフトバンク戦に先発。序盤からの大量援護に応える形で7回を3失点。開幕から無傷の19連勝とし、ルーブ・マーカードが1912年に樹立した大リーグ記録に並ぶと同時に、「神様、仏様、稲尾様」と称された稲尾和久の持つシーズン20連勝のプロ野球記録にあと1勝と迫った。また、08年の楽天・岩隈久志投手(32=マリナーズ)以来、5年ぶりとなる20勝投手誕生も目前に迫った。

 相手の意図を読む「皮膚感覚」ともいうべき洞察力。初回無死一塁。田中は初球にバスターエンドランをかけてきた今宮に対し、スライダーをボール気味に投じた。空振りを奪い、一塁走者の中村は盗塁死した。

 「3点のビハインドの展開で送りバントはないと思っていた。だから、わざと低く投げた」

 初回に打線が3得点。心強い援護をもらって初回のマウンドに立ったが、「変な感じがした」と先頭の中村にいきなり四球を与えた。4試合連続で立ち上がりに走者を出した。ここで捕手の嶋に近寄り、「初球にバスターがありますよ」と耳打ち。鮮やかにピンチの芽を摘み取った。

 6回のピンチは力で切り抜けた。1死から連打で一、二塁とされたが、内川を外角の変化球で三振に仕留めた。続く柳田には2点二塁打を許したが、リーグ打率トップの長谷川を151キロの直球で三振に封じた。この回のアウトはすべて空振り三振で奪った。

 この白星でシーズンの連勝記録も57年に稲尾が記録したプロ野球記録の「20」にリーチ。試合前、ヤフオクドームを訪れていた元楽天監督の野村克也氏(評論家)は偶然にも伝説の右腕を「彼(稲尾)は投げる瞬間に、細工できた投手。観察、洞察力が凄かった」と称賛していた。初回の「バスターエンドラン封じ」はまさに稲尾級の投球術。同氏はかつて「神の子」と称していた田中についても「エースの風格が出ている。地位が人をつくると言うけど、まさにそれ。もう近寄れない。遠くから見ています」と冗談交じりに評した。

 投げるたびに、球史に名を刻む「レジェンド腕」。しかし、田中は個人記録には大した興味を示さない。2年前に沢村賞を獲得した自己最多の19勝に並んでも「目標にしていたわけではない。一つ一つの積み重ねで勝っていければ」と淡々と話した。その上で、こう続けた。「いつも言っているけど、チームが勝てばいい。これまでも自分のことをどうこうは言っていない。きょうも(自分の投球は)何にもよくなかった。苦しみながら勝ったことが大きい」。球団創設9年目にしての初優勝に向けたマジックを25に減らした勝利だけを自己評価した。その姿勢にエースとしてのプライドと責任感がにじんだ。

 ≪稲尾の同一シーズン記録にあと「1」≫田中(楽)が11年の自己最多に並ぶ19勝目。開幕から19連勝、昨季から23連勝とし、ともに自身の持つプロ野球記録を更新。シーズン19連勝は51年松田(巨)と並ぶ2位タイで、57年稲尾(西鉄)の持つプロ野球記録20連勝に王手をかけた。8月は5勝目で、楽天では過去3人(8度)の4勝を上回るチーム月間最多になった。この日は2回までに打線が7得点。2日の日本ハム戦の6回以降、33イニング連続でビハインドの状況がなく、危なげのない投球が続いている。

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