【野球のツボ】3連敗の阪神 9月に必要なものはコレしかない

[ 2013年8月30日 17:15 ]

マウンドでしゃがみこむ阪神・能見

 セ・リーグの優勝争いのクライマックス、巨人―阪神3連戦は、巨人の3連勝という形で終わった。阪神がどこまで粘るか注目したが、結局はミスが明暗を分けた形になった。

 2戦目、同点で迎えた5回1死二塁で、西岡のヒットでホームに還れなかった日高の走塁。3戦目も、初回1死一、二塁での鳥谷のけん制死が痛かった。鳥谷のプレーは注意を喚起できなかった一塁ベースコーチの責任も大きいと感じた。3戦目の能見の交代のタイミングも疑問符がつく。

 ディフェンスでも、3戦とも村田にやられた。同じバッターにやられていては、相手を勢いづかすだけ。和田監督は「ストライクでは勝負できない」と脱帽していたようだが、終わってから総括するのではなく、3連戦の前にいかに村田や阿部を抑えるか、どうやってボールに手を出させるかに工夫をしてほしかった。直接対決はあと4試合だけ。となると、やはり8ゲーム差は重い。重すぎる。

 こういう状況で迎える9月。逆転の望みが薄くなった阪神は、CSをにらんでいくという戦い方も首脳陣は意識していく必要があると思う。2位でいいとは口には出せないが、残り30試合を戦う中で、CSに向けた戦力の再整備に取り組まないと、今回の直接対決で敗れた教訓を生かすことはできない。今年の阪神は投手力で戦ってきた。個々の投手の力量では巨人をしのぐだけのものはあると見ている。ただ、今はコントロール、変化球のキレなどの精度が落ちている。それを1か月で取り戻すことが、阪神の重要テーマだ。

 特にメッセンジャーとスタンリッジ。この2人を9月にどう使い、CSに向けて万全な状態に仕上げることが出来るかどうかがポイントだ。

 野手も同様。三塁はどうするのか。福留のコンディションを含めて、外野の基本布陣をどう組むか。調子のいい者でいく、ではなく、このメンバーでいく、という確固たるオーダーで短期決戦に臨む覚悟が必要だ。

 何よりも必要なのか、監督、コーチ陣の覚悟のほどだ。巨人戦を終え、選手の多くは「終わったな」と感じているはず。ここで切り替え、モチベーションを再び高めるためには、熱い言葉が必要だ。「おれたちは日本シリーズに出る」「日本シリーズに行くんだ」。はっきりとした言葉で、目標を言い続ける。阪神のCSはこれが出来るかどうかにかかっている。(前WBC日本代表コーチ)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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