安楽183球熱投も涙 10回崩れた4失点

[ 2013年8月18日 06:00 ]

<済美・花巻東> 敗戦に涙する安楽(左から3人目)ら済美ナイン

第95回全国高校野球選手権大会3回戦  済美6―7花巻東

(8月17日 甲子園)
 崩れそうになる体を、3年生に抱きかかえられた済美・安楽の目から自然と涙があふれた。

 「ベストに遠くてもチームを勝たせるのがエース。自分はまだまだ本当のエースになりきれていない。もっともっと3年生と一緒に野球がしたかった」

 初戦(14日・三重戦)同様に序盤から苦しんだ。スローカーブを見極められ、甘く入った真っすぐを痛打される。スライダーが本来の切れを取り戻した中盤以降は立ち直ったが、延長10回に4長短打を浴びて4点を失った。

 愛媛大会後に右肩、右肘に張りを訴え、「肩甲骨の炎症」と診断を受けた。同大会では500球超だったが、今春センバツで772球を投げた蓄積疲労は否定できなかった。さらに甲子園入り後の6日には発熱と下痢の体調不良も加わり、体調は万全にほど遠かった。

 それでも「怪物」の片りんは随所に見せた。初戦では最速155キロ。この日も最後の183球目で、「持っている限りの全力のストレート」と、この日最速の152キロで甲子園自己最多となる14個目の三振を奪った。さらに4点を追う延長10回無死一、二塁から「まだ終われなかった」と中堅右へ甲子園初アーチ。バットを握り始めた幼少期。松井秀喜氏を手本に、父から左打ちを勧められ、その松井にも負けない豪快な一撃を放った。

 勝ちたかった…。8回無死一、二塁の打席は二ゴロ併殺打に倒れたが、「中学からしたことがなかった」というヘッドスライディング。上甲正典監督から厳禁されていたプレーもいとわなかった。

 「優勝」という名の春の忘れ物を取り戻すことはできなかった。それでも、まだ2年生。「来年は笑って終われる夏にしたい。また一からやり直しです」。必ず、来年ここに戻ってくる。

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2013年8月18日のニュース