花巻東8強一番乗り!156センチが157キロ腕討ち

[ 2013年8月18日 06:00 ]

<済美・花巻東>1回表1死、内野を5人で守るスペシャルシフトも何の!チーム初安打を放つ千葉

第95回全国高校野球選手権大会3回戦  花巻東7―6済美

(8月17日 甲子園)
 小さな巨人だ。3回戦4試合が行われ、花巻東(岩手)が今春センバツ準優勝の済美(愛媛)を延長10回、7―6で振り切って、8強一番乗りを果たした。09年以来の準々決勝進出で、岩手県勢は夏30勝目。2番・千葉翔太外野手(3年)は、内野を5人で守る済美のシフトをことごとく破り、2試合連続の3安打で、済美のエース・安楽智大投手(2年)を攻略した。安楽は甲子園自己最多の14奪三振、183球の力投も、2試合連続の7失点。高校屈指の右腕が3回戦で姿を消した。

 岩手県代表・花巻東を応援する三塁側アルプス席でNHK連続テレビ小説「あまちゃん」のオープニングテーマ曲が流れる中、まさに「じぇじぇじぇ!」の事態。試合開始2分後。今大会最小兵、1メートル56の花巻東の2番打者・千葉が打席に入ると、甲子園がどよめく。済美の中堅手・町田が、内野に向かって走ってきた。外野手用のグラブをはめたまま、三遊間、それも極端な前進守備。内野5人の「千葉シフト」だった。

 「シフトを取られて燃えました。内野の位置を確認して三遊間よりもセンター方向と思った」

 千葉は初戦となった13日の2回戦、彦根東(滋賀)戦は、5打席で計34球粘った末に全て左方向に3安打。このため、初回1死走者なしという極めて異例の局面で「包囲網」が敷かれた。

 ところが、千葉はいとも簡単に突破。5球目の直球を捉え、狭い二遊間を破って中前へ。打球を処理したのは右翼手で右前打となった。その後に先制のホームイン。7回には思い切り引っ張って誰もいない右翼に打球を飛ばし三塁打。済美ベンチがシフトを諦め、ほぼ通常の守備位置に戻した10回には先頭で中前打、決勝のホームを踏んだ。

 試合後、指揮官の表情は対照的だった。

 花巻東・佐々木洋監督 シフトを敷く時点で、ストライクを投げて打たせてくる。ホームランを打つつもりで引っ張れと言いました。

 済美・上甲正典監督 安楽の球数をいかに減らすことができるか、と思った。きょうは三遊間に打球が飛ばなかったし、策に頼り過ぎた。最後まで千葉君にやられた。

 先輩との貴重な経験も、安楽攻略に大きく役だった。現メンバーは、昨夏の岩手大会前には大谷(日本ハム)相手にシート打撃で対戦していた。千葉を筆頭に「(安楽は)あまり速さは感じなかった」とナインは口をそろえ、1~6番に左打者を並べた打線が11安打。8本が直球を捉えたものだった。

 接戦を制し、09年以来の8強入り。千葉は当時の「2番・中堅」だった1メートル55の佐藤涼平さんに憧れて花巻東の門を叩いた。「身長が大きい相手には負けたくなかった」。たとえ身長が低くても甲子園でヒーローになれる。千葉が証明した。

続きを表示

2013年8月18日のニュース