仙台育英 春の王者・浦学を逆転!逆転!11-10サヨナラ撃破

[ 2013年8月11日 06:00 ]

<仙台育英・浦和学院>9回2死一塁、熊谷(6)の適時打でサヨナラ勝ちし喜ぶ仙台育英ナイン

第95回全国高校野球選手権1回戦 仙台育英11―10浦和学院

(8月10日 甲子園)
 甲子園の歴史に残るシーソーゲームだ。1回戦4試合が行われ、第4試合は2年連続出場の仙台育英(宮城)が今春センバツ優勝校の浦和学院(埼玉)に11―10で今大会初のサヨナラ勝ちを収め、壮絶な打撃戦を制した。1番の熊谷敬宥(たかひろ)内野手(3年)が9回2死一塁から左翼線二塁打を放った。浦和学院は小島(おじま)和哉投手(2年)が9回途中まで9安打9四死球11失点。182球を投げ抜いたが、史上8校目の春夏甲子園連覇はならなかった。

 打球の行方、走者の行方。熊谷は一塁ベースを回りながら2つの行方を追った。左翼手がクッションボールの処理にもたつく。一塁走者・小野寺が必死に走る。二塁ベース上でサヨナラの生還を確認し拳を握り締めた。

 「人生の中で一番のサヨナラ」。10―10の9回2死一塁。左腕エース小島が降板し、右の山口に代わった。凡退すれば延長戦。「左投手より右の方が好きなので、自分で決めようと思っていた」。小野寺は足が遅い。だから長打だけを狙った。フルカウントからの7球目、144キロ直球を思い切り振り抜き、左翼線を破った。今大会初のナイター試合。2時間59分の激闘に終止符を打った。

 今春センバツ覇者と初戦で激突。優勝候補同士の好カードは甲子園で春夏通じて初めてだった。壮絶な点取りゲーム。活路を切り開いたのは、1番打者の熊谷だった。1点を先制された初回、いきなり右前打。一巡して回ってきた2打席目も中前打を放った。この回5四死球を絡めて6点を奪った。だが3回に浦和学院の猛攻を受け、8失点。5回を終えた時点で、スコアは6―10だった。

 6回だ。熊谷は1死二、三塁で中犠飛。中堅手が落球し、一気に2点を返すと、この回4点差を追いついた。ラッキーボーイはいう。「宮城でこういう試合をしてきたので焦らずできた」。宮城大会では準々決勝、決勝でいずれも初回に5点を奪われる劣勢をはね返してきた。慌てず、焦らず、諦めずの「3A」をモットーに、逆転で勝ち上がってきた。

 その宮城大会。熊谷は6試合で26打数5安打、打率・192と不振に陥った。5日の練習中に佐々木順一朗監督から一喝された。「お前は、自分自身に勝つ気持ちがあるのか!」。冬場は数え切れないほど振り込んできた自信があった。フルスイングをすると、今でも痛みが出る両手首にはテーピングが巻かれている。「気持ちの問題だなと思った」。技術面ではない。打席で弱気になっている自分を指揮官に見抜かれた。強い気持ちで打席に入ることを決めた。

 サヨナラ打を含む4安打3打点。1番に導かれ、センバツ覇者に打ち勝った。佐々木監督は「諦めず最後まで集中力を切らさなかった。監督の方が集中が切れそうだった」と苦笑いした。夏は宮城県勢通算60勝目。悲願の東北勢初優勝へ向け、2回戦でも強豪・常総学院(茨城)と激突する。01年センバツ決勝で6―7で敗れた相手だ。「自分たちの野球をすればどんな相手でも勝てる」。熊谷の言葉は力強かった。

 ≪両校2桁得点≫仙台育英―浦和学院はともに2桁得点の打撃戦。夏の甲子園で両校2桁得点は、08年準々決勝の常葉学園菊川13―10智弁和歌山以来。

 ≪夏の甲子園名勝負≫

 ☆箕島―星稜(79年3回戦) 春夏連覇を目指す箕島が4―3でサヨナラ勝ち。延長12回、16回に星稜が1点を勝ち越したが、いずれも箕島はソロ本塁打で同点に。そして、18回に箕島の上野がサヨナラ適時打を放ち、3 時間50分の熱戦に幕を下ろした。

 ☆横浜―PL学園(98年準々決勝) 5―5のまま延長に突入。松坂(現インディアンス傘下3A)を擁する横浜が延長11回、16回に勝ち越すも、PLが驚異的な粘りで同点に。17回に横浜の常盤が2ランを放ち、9―7で3時間37分の激闘を制した。松坂は250球完投。

 ☆駒大苫小牧―早実(06年決勝) 37年ぶり2度目の決勝引き分け再試合となり、早実・斎藤(現日本ハム)が駒大苫小牧・田中(現楽天)との投げ合いを制し、4―3で勝利した。斎藤は最後の打者・田中を144キロ直球で空振り三振。2日間296球を投げ抜き、駒大苫小牧の夏3連覇を阻んだ。

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