福島で内海“復興”9勝 この土地でこの日に勝った意義

[ 2013年8月7日 06:00 ]

<D・巨>内海(左)と握手する原監督

セ・リーグ 巨人6-0DeNA

(8月6日 郡山)
 巨人が福島県郡山市で行われた6日のDeNA戦で完封勝利。内海哲也投手(31)が7回無失点で通算1500投球回も達成しチームトップタイの9勝目を挙げた。「原爆の日」のこの日、広島の「ピースナイター」にセ・リーグ3球場が連動。原発事故の影響に今も苦しむ郡山市の開成山野球場のマウンドに立った左腕の、復興を願う気持ち、勝利への思いが形となった。チームは今季最多タイの貯金24。7日にも優勝マジック41が点灯する。

 大粒の雨が降り注ぐ中、ヒーローは最後まで見守ってくれたファンに力強く左腕を上げた。

 「調子自体はメチャクチャ良かったわけではないが、ランナーを出してからの投球が持ち味。それができて良かった」

 これぞ内海の真骨頂だ。初回、いきなり1死二塁のピンチを背負うがモーガンを左飛。続くブランコは「きょうは良かった」という内角117キロのスライダーで詰まらせ遊ゴロに仕留めた。これで波に乗った。5回にはプロ10年目で史上167人目の1500投球回も達成。7回まで5イニングに走者を出したが失点は許さない。7回には2死一、二塁で石川に左前に運ばれたが味方の好守で本塁刺殺。バックも左腕をもり立てた。

 5月19日の日本ハム戦(札幌ドーム)から前半戦終了まで登板7試合で2勝4敗、計33失点と精彩を欠いた。6月26日の試合前練習中には右足首の捻挫も経験した。焦りから投げ急いだ。そこで球宴期間中に投球フォームを徹底チェック。踏み出す右足を上げた際の「景色が違った」と着地を急ぎ、タメがなくなっていたことに気づいた。後半に入り、7月24日・広島戦(東京ドーム)で7回3失点と好投し「満足まではいきませんが、徐々に良くなっている」と手応えも口にしていた。

 福島での試合。内海が被災地にかける思いは人一倍強い。昨年12月には選手会長としてチームの仲間と福島市で大運動会を開催。被災地の球児たちと綱引きや大玉転がしでともに汗を流した。

 「元気づけようと思ってきましたが、逆に元気をもらった」。その時の言葉をこの日実践した。7回6安打無失点で9勝目。郡山では昨年8月30日の中日戦に先発し4回3失点KO。福島県内では過去2度の登板で防御率4・90だったが、三度目の正直を果たした。1500投球回達成にも「一イニング一イニング、これからも投げたい」と、立ち止まるつもりはない。

 原監督は「グラウンドに来たときは(天候が)心配でしたが、整備をしっかりやっていただき、熱い戦いができた」と被災地での勝利を振り返った。2位・阪神が敗れ、7日にもマジック41が点灯する。内海の復調は確かな追い風だ。

 ▽原発事故による福島の現状 復興庁が発表した福島県外への避難者は7月30日時点で5万3277人。除染作業も終了のめどは立っていない。浪江町など東京電力福島第1原発に近い地域でも除染が進めば住宅に戻れる「避難指示解除準備区域」などの再編が進んでいるが、現実的な見通しはない。具体的な支援対策の大前提となる「線量基準」の検討や、旧警戒区域(20キロ圏内)での野生動物の急増など、この先も多くの問題が残る。

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2013年8月7日のニュース