Aロッド、異例の重い処分のワケは…それぞれの思惑交錯し複雑化

[ 2013年8月7日 06:00 ]

試合前の記者会見では薬物使用には言及しなかったヤンキースのロドリゲス

Aロッド試合出場停止処分発表

 バリー・ボンズらを告発した07年に続く大リーグの薬物スキャンダル。規定では「初犯」の選手には50試合の出場停止が科されるが、ロドリゲスは211試合という異例の厳罰となった。背景には私利私欲が絡んださまざまな思惑が交錯している。

 今回の処分に最も影響を及ぼしたのが、バド・セリグ・コミッショナーだ。今年1月に薬物問題が発覚すると、すぐに調査を開始。3月にはクリニックの運営者を提訴して圧力をかけ、捜査協力を勝ち取り顧客リストを入手した。半ば強引な手法で証拠を集め、ロドリゲスの弁護団との交渉でも「永久追放」というカードをちらつかせて、一歩も引かなかった。

 コミッショナーが躍起になって薬物問題に取り組んでいる理由の一つは、来年で任期満了を迎える自身の経歴に汚点を残したくないため。92年の就任以来、インターリーグやワイルドカードなど次々に新機軸を導入し、WBCも開催。94年のストライキで失墜した野球の人気を復活させた手腕は称賛されている。07年12月の薬物スキャンダルでも、いわゆる「ミッチェル・リポート」で89人の実名を公表し、球界の浄化に強い態度で臨んだ。今回、球界最高年俸選手に前例のない処分を下したことは、選手への強いメッセージといえる。

 ヤンキースとしても「渡りに船」だった。ロドリゲスとは17年まで10年総額2億7500万ドル(約270億円)の契約を結んでいるが、近年の成績不振に加え、度重なるグラウンド外の問題もあり「不良債権」になりつつあった。そこにきての薬物問題。出場停止となれば211試合分の給料を払う必要がない。その額は約33億円にも上り、大幅な年俸削減となる。地元紙では「ヤ軍は永久追放を望んでいたのでは」との報道さえあった。

 一方、ロドリゲスは今後も闘い続けると宣言した。現在、通算647本塁打は歴代5位で、4位のウィリー・メイズまで13本。ヤ軍との契約には歴代順位を上げるたびに600万ドル(約6億円)のボーナスを得る条項が含まれており、少しでも出場停止期間を短縮したいのが狙いだろう。

 調停委員会がどんな最終決定を下すのかは分からないが、今回は「大リーグ機構VS薬物使用13選手」ではなく「セリグVSAロッド」の構図となっている。

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2013年8月7日のニュース