元横浜・大矢氏、駒田氏ら高校生指導に前向き プロ側研修会に参加

[ 2013年7月29日 06:00 ]

研修会で講義に聞き入る高橋善正氏(左)、江藤省三・慶大監督(右)と(左奥から)松岡弘氏、大矢明彦氏ら元プロ野球選手

 プロ野球経験者の学生野球資格を回復するために新設された研修制度のプロ側の第1回研修会が28日、東京都世田谷区の日体大で行われた。巨人、中日でプレーした慶大・江藤省三監督(71)、元横浜(現DeNA)監督の大矢明彦氏(65)、巨人や横浜でプレーした駒田徳広氏(50)ら100人が受講。プロ・アマの歴史的な雪解けの第一歩となる研修を終えた江藤監督らは高校野球の指導者就任に前向きな姿勢を見せた。

 約5時間の研修を終えた慶大・江藤監督は「大学時代以来の勉強。とても参考になったし、いい内容だった」と振り返った。可能となる高校生への指導の興味を問われると「多くの(元プロの)人が持っている。私は年だけど(高校野球が)好き。興味はあります」と言い切った。

 高校はこれまで「高校教諭2年勤続者に対する特別措置」でしか指導者でのアマ復帰ができなかった。今年に入って教諭歴の制限を撤廃し、座学による研修を受ければ学生野球資格を認められることが決定。今回は既に特例により、大学で指導している元プロ監督や全国野球振興会(日本プロ野球OBクラブ)の指導者研修を受けたOBが優先となって受講した。

 誰もが「プロ・アマの雪解けの歴史的な第一歩」と口をそろえ、元中日・木俣達彦氏は「チャンスがあれば、母校(中京大中京)で指導したい」と目を輝かせた。沖縄県で中学生を指導する大矢氏は、監督就任への興味を否定した上で「今までは子供たちが高校に行っちゃうと声を掛けられず、技術的な指導ができればいいなと思っていた」と歓迎。駒田氏も「母校(奈良情報商)にあいさつに行く時に遠慮することもなくなる。遠慮なく意見を言える状況になりたいし、その先頭に立ちたい」と話した。

 元プロ100人が真剣な表情で聞き入った4つの講義。その内容は過去にプロ・アマの交流が断絶した経緯や高校生のケガの防止対策、新人獲得に関するルール説明などで、多くの資料が配布されスライドを使って説明される場面もあった。来月10日にも行われる。

 研修はプロ側の日本野球機構(NPB)とアマ側の日本学生野球協会の2段階。プロ側の受講を経て、今度は学生側が12月に実施する2日間約14時間(東京13、14日。大阪21、22日)の研修を受講し、学生側の適性審査を経て、学生を指導する資格が認められる。

◇主な出席者◇
 氏 名  年齢 最終所属
松岡  弘(66)ヤクルト
高橋 善正(69)横  浜
江藤 省三(71)横  浜
松沼 博久(60)西  武
松本 匡史(58)楽  天
黒江 透修(74)西  武
木俣 達彦(69)中  日
関本四十四(64)巨  人
八木沢荘六(68)ヤクルト
大矢 明彦(65)横  浜
駒田 徳広(50)横  浜
屋鋪  要(54)巨  人
 ※順不同、最終所属は指導者含む

 ▼日本学生野球協会・内藤雅之事務局長 初回にしてはいい内容。今回(の受講者)はアマに近い人たちで、11月以降はアマと接していない人が中心になるので、またミーティングしてプロ側に提言したい。

 ▼労組・日本プロ野球選手会、松原徹事務局長 指導者のあるべき姿など、我々も勉強させられた。足りない部分は学生側に補充してもらいながら項目を整理して、両者でいい研修を構築していきたい。

 ▼全国野球振興会(日本プロ野球OBクラブ)、森徹理事長 やっとここまでこぎ着けた。この収穫を無駄にしないよう、お互いに気をつけながらやっていかないと。

 ◇学生野球資格問題の経緯

 ▽61年 中日が社会人側との協約を破り、日本生命・柳川とシーズン中に契約。この柳川事件を機に社会人側はプロ退団者を一切受け入れないことを決定。

 ▽65年 ドラフト制を導入。それまで高校生も含め全てのアマ選手が自由競争だったが、プロ・アマの秩序が確立。

 ▽73年 大学がOBの元プロ選手が届け出をすれば出身校に限り指導許可の姿勢。97年には出身校でなくてもOKに。

 ▽78年 社会人が元プロの監督就任許可。

 ▽84年 高校も「元プロ野球選手の高校教諭10年勤続者に対する特別措置」により指導者としてアマ復帰が可能に。

 ▽94年 特別措置の高校教諭勤続年数が5年に短縮。

 ▽95年 特別措置の高校教諭勤続年数が2年に短縮。

 ▽03年 12月に現役プロ選手による高校生を対象とした初のシンポジウムを大阪で開催。

 ▽13年1月17日 「学生野球資格に関する協議会」が開かれ、日本高野連が2年の教諭歴を撤廃し座学による研修を受ければ学生野球資格を認める大幅な条件緩和案を日本野球機構に提示。

 ▽4月26日 プロ・アマによる「学生野球資格に関する協議会」事務折衝で研修制度案について大筋で合意。

 ▽5月24日 日本高野連が定例の理事会で2年の教諭歴の制限を除外するよう、日本学生野球協会の理事会に上申することを決定。

 ▽6月18日 日本学生野球協会が理事会で学生野球資格を回復する研修制度を承認。

 ▽7月1日 資格回復の新制度が施行。

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