故郷大応援団を力に 矢貫が福島魂見せた

[ 2013年7月23日 06:00 ]

<全パ・全セ>矢貫に声援を送る子どもたち

マツダオールスターゲーム2013第3戦 全パ3―1全セ

(7月22日 いわき)
 故郷・福島で、日本ハム・矢貫は思いの詰まった10球を投じた。全球直球勝負。3者凡退でマウンドを降りると、温かい拍手が送られた。

 「たくさんの応援に後押しされて、いつも以上の力が出せました。球宴は夢のまた夢だった場所。投げることができて僕の中で満足です」

 球宴出場メンバーでただ一人の福島出身。東日本大震災では実家は被害はなかったが、親戚の家は一部壊れた。スタンドには家族や親族が駆けつけ、自身が所属した小田倉スポーツ少年団、西郷二中野球部の後輩たちが陣取る外野席では「矢貫」の応援ボードが揺れていた。高校は仙台育英に進学したが、公式戦出場はなく、スタンドで太鼓を叩いていた。そんな投手がプロ野球のオールスターという晴れ舞台で地元に凱旋した。

 「正直、僕はまだ人に夢を与える選手ではないと思っている。投げている姿を見て感じてもらえれば」。150キロを超すような直球はないが、ボールに魂を込めた。本拠地・札幌ドームで行われた第1戦は1回2安打1失点だったが、地元ファンの前で躍動した。

 昨年の球宴期間は、札幌ドームでの1軍練習に参加し「いつ2軍に落とされるか分からない。シート打撃で必死でした」という。今季は40試合に登板して、防御率1・60。今では勝利の方程式の一翼を担う。着々と階段を昇ってきた右腕は「僕みたいな選手でもこういう舞台に立てた。きょうをきっかけにプロ野球選手を目指してくれる子がいればうれしい」。生まれ育った福島へ思いをはせ、充実感いっぱいで凱旋マウンドを終えた。

 ◆矢貫 俊之(やぬき・としゆき)1983年(昭58)12月15日、福島県生まれの29歳。小田倉小4からソフトボールを始め、西郷二中で軟式野球に転向。仙台育英では公式戦出場なし。常磐大で関甲新リーグ通算10勝を挙げ、06年に三菱ふそう川崎に入社。08年ドラフト3位で日本ハム入団。1メートル90、88キロ。右投げ右打ち。

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