【野球のツボ】雨中止の1試合に大一番の予感~TG3連戦から

[ 2013年7月5日 11:15 ]

4日の阪神戦で激走を見せた巨人・高橋由

 甲子園での阪神-巨人戦は、巨人が2戦2勝で首位を守った。ともに1点差。僅差での決着となった。

 初戦では寝過ごして1軍を抹消された中井が4安打でチャンスを広げ、2戦目は4月に左ふくらはぎの肉離れで戦列を離れていた高橋由伸が6回無死一塁から、村田の右前打で三塁を陥れ、決勝点につなげた。心に期するものがあった2人が、阪神との首位攻防戦で存在感を示した格好だ。

 ポイントでの勝負球の選択が明暗を分けた気がしてならない。第1戦では1点を追う7回2死二塁で、中井を置いての坂本の打席だった。2ボール1ストライクから、能見はチェンジアップで空振りを奪った。ここで、再びチェンジアップで勝負にいったが、空振りを取った球より、少し高くなったところを左翼線に運ばれ、試合は同点となった。

 2戦目も高橋の好走塁での無死一、三塁からのボウカーの打席がポイントだった。外野フライも禁物という状況で、スタンリッジは1、2打席目にボウカーを仕留めていたスライダーでカウントを追いこもうとしたが、スライダーを意識していたボウカーに右に運ばれた。ストレートが走っていただけに、力で押していたら犠牲フライを許すこともなかったのでは、と感じた。

 相手が意識している球を続けたという点で、阪神バッテリーのやや緩い部分も垣間見えた。能見もスタンリッジも内容は良かっただけに悔いが残る。ともに与えずに済んだ1点だったという印象だ。

 接戦をいかにモノにするかという点で、巨人に一日の長が見えた直接対決だったが、これでペナントレースも巨人が有利になったとは断言できない。過酷な夏場の戦いは、これからが本格化する。ともに1点差という結果でも分かるように、力の明らかな差があるわけではない。序盤で巨人が大差をつけていたことを考えると、阪神はジワリと詰めてきている構図。この流れがこれからどう動くかだろう。そういう意味では巨人の2戦2勝という結果だけでなく、雨で流れた2戦目の行方にも興味は向く。

 終盤戦に組み込まれることになる直接対決の1試合が、今季を象徴する大一番になる。胸躍る予感がしている。(前WBC日本代表コーチ)
 
 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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