【野球のツボ】統一球騒動 野球・ソフトの五輪復帰に影響も

[ 2013年6月20日 11:35 ]

2011年の統一球導入を前に、断面を披露する加藤コミッショナー

 本当にコミッショナーは知らなかったようだ。シーズン真っただ中のプロ野球を直撃した「統一球」騒動。メーカーにも口止めを指示したNPBの隠ぺい体質に対して、選手もファンも納得はしていない。会見で「私は知らなかった」と語った加藤コミッショナーにも、疑問の声が相次いでいる。「一番エライ人が知らないはずはない」。これが大方の見方だ。

 コミッショナーの発言をチェックし、発覚後に出てきたいろんな話を私なりにまとめてみると、「知らなかった」という発言は本当なのだろうと、推測している。昨年まで投高打低で得点が入らず、野球が盛り上がりに欠けてきていることを憂慮し、反発力のデータも基準以下だったことで、事務方は仕様変更の必要性をコミッショナーに説いたが、自ら導入した球界トップは首をタテに振らない。コミッショナーの了解を取ることを諦め、極秘に仕様変更を進め、今回の混乱を招いた。現段階では、私はこう解釈している。

 もちろん、組織の責任者であるコミッショナーは、いくら「知らなかった」としても、その責任は重いと言わざるを得ない。NPBという日本のプロ野球を管轄する組織の力はこの程度だということが明るみになった。プロ野球が背負ったダメージは甚大だ。

 選手会が主張しているように、ボールの変更は出来高契約をしている選手の職場環境に直結する問題。特に防御率や被本塁打などで契約している投手は、深刻な影響を受けることになる。また、ヤクルト・宮本選手が発言していたが、「ボールが変わるということを明らかにしていたら、ユニホームを脱がずに済んだ選手がいたかもしれない」という指摘ももっともだ。金本や小久保といった選手の寿命も伸びていたかもしれないのだ。

 NPBは第三者委員会を設置し、一連の騒動の検証を進めるという。選手やファンも納得するような公正で透明性の高い検証にしてほしいと心から願う。早くこの問題を解決しないと、「野球の五輪復帰」という野球人たちの悲願達成に暗い影を落とすことにもなりかねないと危惧するからだ。「野球・ソフトボール」という連合体で、五輪復帰を目指す活動は各国で展開されている。9月のIOC総会で実施競技が決まるが、ただでさえ、レスリング優位という見方が主流な中、巻き返しを図るにも、ボール問題はネックになってくる。米国とともに最も野球が盛んな国・日本の組織、リーダーがこの程度、となると、復帰運動も盛り上がらない。

 「統一球」問題は、プロ野球内部だけでの問題ではない。NPBはもっと危機感をもって対処してほしい。(前WBC日本代表コーチ)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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2013年6月20日のニュース