川崎はなぜ愛される?漫画みたいな強烈キャラのニューヒーロー

[ 2013年6月12日 07:41 ]

5月26日のオリオールズ戦、逆転サヨナラ二塁打を放ち、チームメートに抱き付いて喜ぶブルージェイズ・川崎(右)

 米国で「KAWASAKI」といえば、最初に思いつくのは日本製のバイクメーカー。しかし、カナダ・トロントでは、一人の日本人野球選手をイメージする。今季からブルージェイズでプレーする川崎宗則内野手(32)は今やその独特なキャラクターでチームNo・1の人気者だ。打率は2割そこそこだが、地元ファンの間では7月のオールスターゲームに出場させようという動きまで出ている。なぜ今、川崎なのか――。周囲の声から検証した。

 今月3日。ブルージェイズはサンフランシスコ遠征中で、試合がないオフだった。この日は川崎の32歳の誕生日。10、11年と2年連続で本塁打王を獲得した主砲バティスタは、川崎を連れて、近郊のワインの世界的産地ナパバレーに出掛けた。

 「彼の誕生日を祝うためにね。ワインを楽しんで、ディナーも一緒にした。一日中楽しく過ごせたよ」。バティスタはドミニカ共和国出身で、1年違いの80年生まれ。川崎の英語はお世辞にもうまいとは言えない。しかし、チームで愛されている理由についてこう話す。「積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢がいい。私も母国語がスペイン語だから、最初は英語を話すことに恥をかきたくないと躊躇(ちゅうちょ)していた。でも彼は気にせず、どんどん質問してくる」

 そんな川崎人気にさらに火を付けたのが、5月26日のオリオールズ戦だ。9回にサヨナラ打を放つと、試合後の他の選手のヒーローインタビューに飛び入り参加。「マイネーム・イズ・ムネノリ・カワサキ。アイム・ジャパニーーーズ!」と絶叫した。通訳を付けず、「カンペ」を手にした爆笑インタビューがインターネットの動画サイトで話題となり、カナダ中に名前が知れ渡った。

 熱狂的ファンの間では、川崎を7月16日(日本時間同17日)にニューヨークで開催されるオールスター戦に出場させようとするキャンペーンまで始まった。「KAWASAKIの名前を投票用紙に記入しよう!」。まるで大統領選挙のようなPRビデオを動画サイト「ユーチューブ」で発信しているのは、川崎を応援するトロントの私設団体「KAWASAKI Super PAC」だ。

 川崎は、大型補強の目玉として新加入したオールスター遊撃手レイエスの故障により、4月13日にメジャーに昇格。ここまで48試合で打率・216、0本塁打、14打点と球宴にふさわしい成績とはいえない。しかし、ビデオの制作者は「一部のファンからは“オールスターの権威を台無しにする”とお叱りの言葉をもらっています」としながらも「彼らにはこう言います。野球は楽しいスポーツ。仮に試合に負けていても川崎を見ているだけで、みんな笑顔でいられる」。ビデオはベンチ内で踊る姿などを取り込んだコマーシャル仕立てのものなど数種類ある。

 先月末には投票を呼び掛ける専用ツイッターも登場。こちらの制作者は「サヨナラ打の時は本当に面白かった。あの興奮がキャンペーンをスタートさせたといえる。川崎はチームの心、魂だ」と熱弁する。

 川崎が愛される理由は、トロントという土地柄とも関係している。人口250万人を誇る北米有数の都市だが、移民の数は米国のマイアミに次いで世界で2番目に多い。地元紙「トロント・サン」のケン・フィドリン記者は「トロントは欧州、南米、アジアなど世界中から集まった人たちが住む国際都市。ここでは自己主張することが大事。だから、彼のあの個性的なキャラクターを自然と受け入れることができる」と分析する。

 球場のグッズ売り場で川崎Tシャツは完売。7日の試合前には地元テレビ局の英語レッスン企画にも出演した。意味不明の「ガーヒー!」という言葉を連発し、大爆笑を誘った。ブ軍の試合を中継するテレビ局「スポーツネット」のバリー・デービス記者は「今度、ムネの一日をドキュメントで撮らせてほしいと頼むつもりだ。朝起きて何をしているのかとか、みんな知りたいと思っているよ」とまで話している。

 これまでの日本人選手のイメージを覆すキャラクター、その川崎を受け入れるトロントという国際都市、そしてレイエスの故障離脱。この3つが重なり、川崎というニューヒーローが生まれた。

 ▽川崎のサヨナラ打VTR 5月26日のオリオールズ戦の9回に逆転サヨナラ2点二塁打を放つなど3安打3打点と大活躍。試合後の他の選手へのインタビューに飛び入り参加し「サンキューベリーマッチ。マイネームイズ、ムネノリカワサキ。アイム、ジャパニーーーーズ!」と絶叫すると地元ファンから大喝采を浴びた。全米のメディアがこの映像を取り上げ、「忘れられないインタビュー」などと絶賛された。

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