目の前で敬遠 阿部「キタ、キタ、キターッ」8回V3ラン

[ 2013年6月7日 06:00 ]

<巨・日>8回2死二、三塁阿部が右越えに逆転3ランホームランを放つ

交流戦 巨人4-2日本ハム

(6月6日 東京D)
 今年は逆転の慎ちゃんだ。巨人の阿部慎之助捕手(34)が6日、日本ハム戦で逆転の15号3ランを放った。1点を追う8回2死二塁から3番の坂本勇人内野手(24)が敬遠気味の四球。重盗を決めた後、4番の意地を見せる一発を右翼席に叩き込んだ。シーズン4本の逆転アーチは自己最多となり、チームは3連勝。敗れれば、連夜のサヨナラ勝ちを収めた阪神に首位を奪われる窮地を救った。

 坂本が2ボールになり、ネクストバッターズサークルの阿部は捕手用レガースを外し始めた。1―2の8回2死二塁、投手は左腕・石井。昨季日本一を決めた日本シリーズ第6戦で決勝打を放った相手だ。だが、4番勝負。敬遠気味の四球を見届け、打席に向かった。

 「僕と勝負だろうなと思ってスイッチを入れた。キタ、キタ、キターッと」。初球に重盗が決まって二、三塁。2ボール2ストライクから内角低め142キロ直球をさばいた。右翼ポール際への逆転15号3ラン。左打者の泣き所を完璧に捉える技術と、4番の意地が詰まった一振りだ。試合前まで左腕は打率・211と打ちあぐねていた。「向こうも戦略がある。僕も左の方が打っていないし」。冷静さを保ち、重盗後にバットを一握り短く持ち替えた。「(2ストライク目の)空振りで力んでいるなと思い、よりコンパクトにいった結果が最高の形になった」

 一塁ベンチ上最前列で観戦した父・東司さんへ最高の誕生日前祝いとなった。試合のない7日に58歳となる。名門・習志野で元阪神の掛布雅之氏とクリーンアップを組んで甲子園にも出場した父を阿部は「永遠のコーチ」と呼ぶ。昨年も、10年にも同じ6月6日に前祝い弾を届けてきた。体を開かず三塁方向へファウルを打ち続ける阿部独自の練習方法も、小学生時代から父に叩き込まれたもの。右肩の開きを抑えることで、内角をさばいた右翼ポール際の打球が切れにくい阿部独特の弾道が生まれる。「紙一重だよ。もう1回打てと言われたらファウルかもしれない」と振り返ったが、何発も切れないアーチにつなげてきた。

 「最高にうれしい気分です」と東司さん。自室には過去節目を飾ったバットなど阿部のお宝グッズが並ぶが、別格は3月のWBC2次ラウンド・オランダ戦で1イニング2本塁打したもの。2本のバットに打撃痕が、寸分違わず残っていた。「打ち方も打球も違ったのに、何センチも違わず同じ場所に。あいつの技術にはたまげた」と永遠のコーチも感服。真芯で捉える技術の高さを物語る逸品だ。

 8回一、二塁の阿部の打席での重盗という状況は、盗塁失敗で敗退したWBC準決勝プエルトリコ戦と同じだった。だが「全く(頭に)ありませんでした」という。そして5連敗から3連勝と勢いを取り戻し「全部勝ったらチャンスはある。そこは諦めちゃいけない」と借金1の状況でも交流戦連覇を捨ててはいない。4番のバットが乗ってくれば怖いものなしだ。

 ▼巨人・原監督 鳥肌が立つような、ベンチから見ていても、素晴らしい本塁打だった。半分敬遠みたいな形で4番勝負。それをものの見事にはね返した。

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2013年6月7日のニュース