小笠原 ドン底からの復活サヨナラ弾「やっぱり気持ちいい」

[ 2013年6月6日 06:00 ]

<巨・日>お立ち台で感極まった表情を見せる巨人の小笠原

交流戦 巨人4-1日本ハム

(6月5日 東京D)
 不屈のガッツがミスターを超えた。巨人の小笠原道大内野手(39)が5日の日本ハム戦で、同点の延長11回に自身初となる今季1号の代打サヨナラ3ランを放った。最近2年間は不振と故障に苦しみ、今季も開幕2軍スタートだったが、2年ぶりのアーチで復活をアピール。39歳7カ月でのサヨナラアーチは、1973年の長嶋茂雄がマークした37歳4カ月を抜く球団最年長記録となった。

 どうだ、とばかりに小笠原はバットを放り投げ、打球の行方をゆっくり見やった。熱狂の右翼席へ白球が吸い込まれていく。サヨナラだ。延長11回無死二、三塁で代打登場。フルカウントから、増井の149キロをぶっこ抜いた。11年8月19日のヤクルト戦(東京ドーム)以来の本塁打が、熱戦に終止符を打った。

 「打った瞬間は入ったかは分からないけど、外野フライにはなると思ったので。勝ったな、と。やっぱり気持ちいいですね。思い出しました」

 涙はないが、感無量だった。サヨナラ本塁打は3年ぶり3本目。39歳7カ月でのサヨナラ弾は、長嶋の37歳4カ月を抜き球団史上最年長記録となった。2年連続の大不振で昨オフには球界最高額となる3億6000万円の減俸をのみ、年俸7000万円で契約。キャンプは2軍スタートで、折れたバットで左手人さし指を15針縫った。昇格は5月18日。右手小指骨折だったボウカーが復帰し、DH制のない交流戦明けは1軍の保証もない。

 統一球導入後の2年間、どん底で苦しんだ小笠原は初めて変化を求めた。軸足に体重を置いて球を引きつけていた打撃を、ステップして投手寄りで捉えるようにした。遠心力を意識し、フリー打撃では試合用より10センチも長い97センチの長尺バットを使用。素手での打撃練習にこだわりを持っていたが、裂傷後は打撃グローブを着用した。三塁ベースを回ると珍しくガッツポーズも出た。苦しかった2年間だが「(気持ちの落ち込みは)ないに等しい。やるべきことは決まっていた。いつか必ずチャンスはあると信じていた」。愚直な信念は不変だった。2軍でもがき苦しんできたベテランを見てきた荒井2軍打撃コーチも「泣かなかったのならば、まだ火は消えていないね」と喜んだ。

 敬遠策も考えられた。原監督はそれも想定し、切り札・石井はベンチに残して小笠原を起用した。「残念ながら2人の役割という点では、まだ石井の方が上」と説明した。小笠原も心得ている。「たった1本打っただけ。あすまた仕事ができるように」。歓喜を押し込むように、鋭い視線で完全復活の時を見据えた。

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