松井氏 野球&ソフト五輪復活の切り札に 両協会が“登板”熱望

[ 2013年5月31日 06:00 ]

野球・ソフトボールの五輪復活へ協力を要請されることになった松井氏

 ゴジラが復活の使者となる。29日にロシアで開催された国際オリンピック委員会(IOC)理事会で、2020年夏季五輪実施競技の最終候補に下馬評を覆して野球・ソフトボールが残ったことを受け、全日本野球協会と日本ソフトボール協会が30日、巨人やヤンキースなどで活躍し国民栄誉賞に輝いた松井秀喜氏(38)に協力を仰ぐ計画を明らかにした。野球の実施競技復活に向けたロビー活動、さらに正式決定の場となる9月のIOC総会(ブエノスアイレス)でのプレゼンテーションを要請するもので、松井氏に「逆転ホームラン」の期待がかけられる。

 切り札は、松井氏だった。全日本野球協会の鈴木義信副会長は「松井氏にロビー活動をお願いしたい。協力要請を来週早々にプロ側(NPB)に伝えたい」と仰天構想を披露。また、日本ソフトボール協会の宇津木妙子常務理事は「日米でやってきた方。最後のプレゼンで松井さんから野球の魅力を伝えてほしい」と、9月のIOC総会への「登板」を熱望した。

 08年北京五輪以来の復活へ、実は、松井氏への協力要請は極秘裏に2月から練られていた。同月28日に行われたプロ・アマ合同会議で、五輪競技復活に向け、国際野球連盟(IBAF)の準会員となったNPB側から松井氏の起用を提案された。すぐに4月14日に東京で開催される「世界野球ソフトボール連盟(WBSC)」設立に際しての総会出席を打診。しかし、夫人がニューヨークで3月上旬に第1子となる長男を出産予定だったこともあり、調整がつかなかったという。今回は満を持して再度の出馬要請となる。

 国民栄誉賞に輝いた松井氏は、日本の顔と言える。そして、巨人で10年、大リーグで10年プレーした松井氏の経歴こそ、五輪競技復活へ欠かせないものとなる。

 最終候補に残ったとはいえ、決して楽観はできない。事実、鈴木副会長は「大リーグ機構(MLB)の協力が鍵となる。正直言って、(現時点で)レスリングに差を付けられた」と語る。IOCが放映権など商業価値の側面から、最も重視するのがメジャーリーガーの出場。IBAFはMLBに対し、準決勝以降限定でメジャーリーガーの参加を求めているが、確約を得られていない。その意味では今後の交渉の行方がポイントとなる。MLBの全面協力は影響力や収益力などの面でも大きなインパクトとなる。それだけに、日米で絶大な知名度を誇る松井氏は「橋渡し役」としてうってつけだ。メジャーリーガーの派遣、競技復活となれば、20年五輪に34歳と円熟期を迎えたダルビッシュ(レンジャーズ)の出場も夢ではない。

 今月5日の国民栄誉賞授与式で、松井氏は「日本の野球の、そして野球を愛する国民の皆さんの力に少しでもなれるように、努力していきたいと思います」とあいさつした。現時点で要請を受諾するかどうかは不透明だが、自らのその言葉を実践する時が早くも来たのは確かだ。

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2013年5月31日のニュース