【野球のツボ】なぜ村田を外した?原監督の目指す野球とは

[ 2013年5月28日 12:55 ]

26日のオリックス戦の第1打席で3球三振に倒れ、ベンチに下がる村田(左)。右は原監督

 巨人・原監督の「非情采配」が話題になっている。26日のオリックスとの交流戦での村田の起用法だ。初回の守りで村田はバルディリスの打球処理を誤り、エラー。相手に先制を許すきっかけを作った。さらに、その裏の2死一、二塁の場面では3球三振。原監督は即座に交代を告げた。

 原監督は試合後、報道陣の質問にこう答えた。「心技体ともに準備ができていないという判断のもと、こういう用兵になりました。準備不足と判断しました」。主力を1イニングで見切りをつけたことには賛否両論あるようだ。「こういう起用だと選手が委縮する」「懲罰的な選手起用ではないか」という声も聞いた。

 私はこの日、現場で取材したわけではないが、状況と監督コメント、そして原監督がこれまで取り組んできた野球観も含めて考えると、「原監督らしい決断をした」と評価している。

 監督の仕事とはバントとかのサインを出したり、投手の交代を決めるだけではない。一番大事なことはチームとしてどんな野球を目指すのか、それを選手、スタッフに浸透させることだと考えている。

 原監督は「戦う準備ができていない選手は使わない」という明確なメッセージと、村田交代という中で、チームに発した。生え抜きと移籍組、ベテランや若手という区別をつけることなく、筋を通すのが原監督のスタイル。生え抜きには甘く、移籍組には厳しく、ではチームは戦えないことは、原監督が最も理解しているはずだ。

 監督として通算で10年目を迎えた原監督。対戦相手を驚かすような奇策でアピールするタイプではなく、戦い方はオーソドックスだ。常勝を求められる巨人にあっては、勝利という同じ目標に選手を向かせることが何よりも優先される。選手の方も原野球は理解した上でプレーしていると思う。

 「当たり前のことを当たり前にやる。そのためにも準備をおろそかにしてはいけない」。セではトップを独走している巨人だが、原監督自身が「勝負はそんなに甘いものではない」と思っているからこそ、村田交代を決断したのだと分析している。(前WBC日本代表コーチ)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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2013年5月28日のニュース