松井氏入閣の決意 首相公邸夕食会の日に語った

[ 2013年5月9日 06:00 ]

首相公邸を後にする松井秀喜氏

 国民栄誉賞を受けた松井秀喜氏(38)が8日、巨人の指導者として現場復帰する意向をあらためて示唆した。巨人は松井氏の最終的な意思を確認した上で、早ければ来季入閣に向けた動きを加速させるとみられる。松井氏は同日、長嶋茂雄氏(77=巨人終身名誉監督)らとともに首相公邸での夕食会に招かれ、安倍晋三首相(58)から受賞を祝福された。松井氏は9日に、生活の本拠とするニューヨークに向けて再渡米する。

 それは決意表明にも聞こえた。再渡米を翌日に控えた松井氏は、03年のメジャー移籍以来、イメージキャラクターを務めてきた機械メーカー「コマツ」の本社を父・昌雄さんとともに訪れた。そして松井氏は同社社員を前に、約束した。

 「もう選手としてプレーすることはできないけれど、違う形で良いものをお見せできればいいなと思います」

 「違う形」。野球界への恩返しの方策はさまざまだが、5日の国民栄誉賞授与式の際にも「とにかく、そこ(指導者)を目指して頑張りたいと思います」と話すなど、松井氏の考えの中心に現場復帰があるのは確かだ。3日に帰国してから、日本国中の大きな期待を身をもって感じてきた。現役時代に「ファンの期待」を背負って戦った男が、早期現場復帰へ気持ちが動いたとしてもおかしくない。

 巨人の渡辺恒雄球団会長はすでに1月の段階で「原君はまだやるけどね。その後は松井君は最適だよね」と次期監督候補に挙げた。5日の授与式でも「お父さんにはお願いしておいた」と話すなど、ポストを用意する準備を進めている。引退スピーチの中で「僕の心の中には常にジャイアンツが存在し続けます」と話した松井氏が希望すれば、即入閣の受け入れ態勢はできている。

 午前中から関係各所へのあいさつ回りに忙しく動き回った松井氏は、夜には首相公邸での首相との夕食会に長嶋氏とともに出席。巨人の渡辺会長、白石興二郎オーナーも交えた食事会は約90分、午後8時30分ごろまで続いた。出席者によると、和食メニューが並び、長嶋氏がウーロン茶だったのに対し、松井氏はワインを口にしたという。渡辺会長も岸信介元首相の話を出すなど野球と政治の話が半々で、松井氏に入閣要請する場面はなかったもようだ。

 松井氏は会食後、言葉を発することなく帰路に就いたが、首相は都内の私邸前で「大変楽しい夕食会でいろんな話が聞けた。あす(9日)、松井さんはニューヨークに帰られるそうだ。これからも野球に関わって活躍してほしい」と語った。

 次に松井氏は、どんな形で日本に戻ってくるのか。日本中が松井氏の決断の時を待っている。

 ▽首相公邸 東京都千代田区永田町にある首相が居住する施設。隣接する首相官邸は首相が執務の拠点として使用する。現在の公邸は1929年に建設され5・15事件や2・26事件の舞台となった旧官邸を改修し05年に完成。鉄筋4階建てで、床面積約7000平方メートル。

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