長嶋氏 松井氏へ「野球道に集中して」…自らの失敗踏まえた親心

[ 2013年5月6日 06:00 ]

長嶋終身名誉監督(左)をオープンカーにエスコートする松井氏
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国民栄誉賞授与式

 愛弟子のファンへ向けたメッセージを、長嶋氏はじっと聞いていた。近い将来の監督。そのつもりで育ててきた。セレモニー後の会見で松井氏の今後について、こんな言葉でエールを送った。

 「松井君の場合、野球一筋だと思う。これからも野球道に対して精いっぱいやると思うけど、アメリカで10年、日本で10年ですからまだまだ。やるからには、国民に対して応援するような形でやるべきだと思う。松井君にしかできないと思うので、そういう気持ちで野球道に集中してほしい」

 ミスター流の熱い「教え」だった。日米20年のプレー経験だけではまだ足りない。もっと野球道にまい進し、国民に愛される指導者になれ――。そんな思いを往年の長嶋語に凝縮して伝えた。隣の松井氏は、笑みをたたえて聞いている。その言葉の真意は誰よりも理解しているのだ。「監督と松井はあうんの呼吸ですから。言わなくても分かっていますよ」。93年から監督専属広報として師弟を間近で見続けてきた小俣進氏はそう説明した。

 松井氏が引退を決意する以前から、長嶋氏は愛弟子の進路について関係者にこう話している。「いきなり監督になるよりもコーチを経験してからの方がいい」。自身は74年オフに現役引退し、そのまま監督に就任。1年目の75年は巨人史上初の最下位に沈んだ。同じ失敗を松井氏にはさせたくないという親心がある。「日米20年ではまだまだ」とは、監督になるまで多くの経験を積まなければならないという意味。そのために「野球道に集中しろ」と続けたのだ。

 選手としても、監督としても自らの後継者と位置付けている松井氏。将来を見据え、技術だけでなく野球人の心も伝授してきた。ただ、教えることはまだまだある。熱っぽく語るミスターの顔はそう言いたげだった。

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2013年5月6日のニュース