【野球のツボ】巨人快進撃のウラに坂本の成長

[ 2013年4月17日 11:20 ]

14日に行われたヤクルト戦の9回、代打・武内の飛球をダイビングキャッチする坂本

 開幕ダッシュに成功した巨人で、目につくのは坂本の攻守走にわたる成長だ。14日のヤクルト戦で見せた動きは素晴らしかった。9回の守りで、三塁後方に上がったファウルフライを、スライディングキャッチ。スピードを落とさず、落下地点まで走りぬいて、アウトをもぎとった。球場を沸かせたスーパーキャッチだった。

 私が感心したのは、走塁でもあった。3回1死二塁で、阿部への投球がワンバウンドすると、ヘッドスライディングで三塁を陥れ、決勝点につなげた。試合後の「変化球が大きな投手なので、狙っていた。細かいことをチームでやっていけば、いいプレッシャーになると思います」のコメントに、巨人好調の理由も表れていた。

 WBCで話題となった「グリーンライト」。試合の流れを変えた鳥谷(阪神)の台湾戦での起死回生のスチール、そして準決勝での内川(ソフトバンク)の憤死と、明暗は別れた形になったが、坂本はこの作戦の精神を、そのままペナントレースにも持ち込んでいると思う。

 「グリーンライト」は「行けたら行く」と受け身のように解釈されている部分もいまだにあるが、本質は「常に行く意識で集中する」という前向きな作戦だ。ヤクルト戦での走塁も「ワンバウンドになったから行く」のつもりだったら、スタートも切れないし、セーフにもならない。「ワンバウンドになるのを待って、行く」だったから三塁を陥れることができたのだ。

 昨年までの坂本は、集中しているときと、気が抜けたようなときの差がはっきりしている選手だった。ミスを引きずるような部分もあったと見ていた。しかし、今季はワンランク上のレベルで、意識を集中して取り組んでいることがプレーにも表れている。WBCでの経験を、しっかり自分の財産としている。

 坂本が名実ともに一流になるため、求められるのはスローイングのレベルアップだ。ショートでの送球ミスは、相手に余計な塁を与え、失点につながる可能性が極めて高い。捕球してからが速く、しかもミスがない。その域に到達できる能力を、坂本は持っていると期待をしている。(前WBCコーチ・高代 延博)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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2013年4月17日のニュース