【野球のツボ】NPBは“世界”と戦ったのか

[ 2013年3月26日 11:10 ]

WBC準決勝のプエルトリコ戦、最後の打者となった代打・松井稼頭央は、歓喜に沸くプエルトリコ選手達の前をゆっくり引き上げた

 WBCは各国の代表による世界一決定戦だ。となれば、日本ならNPB、アメリカならMLBと、代表チームを管轄する上部組織の能力も問われる舞台と言えるはずだ。残念ながら、今回の大会では、選手たちが戦いに集中できる環境を作る、という点で、バックアップが完全だったとは言い難い。ベスト4入りを決めて、アメリカに入ってからは、いろんな面で変更、変更が相次ぎ、「一体どうなっているんだ」とイライラさせられることが多かった。

 特に準決勝前日は、そのイライラがピークに達した。アリゾナからサンフランシスコに移動しての前日練習は、正午から2時間の予定だったが、その朝になって、選手の用具がサンフランシスコではなく、ロサンゼルスに送られていたことが判明。練習は急きょ午後7時からに変更となった。選手の多くは昼からの練習に備えて起床しており、予定変更がなければ、リフレッシュする時間もしっかりと取れたはずだ。

 悪いことは続くもので、時間が変更になった練習を終えると、今度は用意されたバスがバッテリー上がりで動かない。「10分で代わりのバスを用意する」という話だったが、待てど暮らせど、バスは来ない。結局、動かなくなったバスをスタッフが手押しで動かし、2台目のバスに乗り換えて、宿舎に戻ることが出来た。大事な準決勝前夜がトラブル続き。こうした不手際について、NPBが主催者側に抗議したという話も聞かない。これは残念なことだ。

 準決勝で負けてからのバッシングも、想像を超えるものだった。結果がすべての世界だと理解はしていたが、雑誌やワイドショーなどでの責任追及の声は、聞くに堪えないような中身のものもある。このような状況を、球界として放置したままでは、次回のWBCのときに、代表チームのために協力しようとする野球人は誰もいなくなってしまう。

 代表監督問題では、今回も難航したが、次回はもっと難しいものになりそうな気がする。サッカーでは常時、代表チームが置かれ、合宿や練習試合などで、チーム力の向上を図っている。人気では日本で一番のプロ野球で、それがなぜ出来ないのか。資金と人材を集め、組織として世界に対抗するようにすることが、今回のWBCで残された課題だ。(WBCコーチ・高代 延博)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務める。浩二ジャパンの頭脳。

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