「重盗OK」サインも…走塁ミスで消えた侍ジャパンV3

[ 2013年3月19日 06:00 ]

<日本・プエルトリコ>勝利に歓喜するプエルトリコナインとは対称的に、無念の表情でベンチから出てくる日本ナイン

 第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は17日(日本時間18日)、準決勝1試合を行い、侍ジャパンはプエルトリコに1―3で敗れ、3連覇を逃した。8回に1点を返し、なおも1死一、二塁の好機で、一塁走者の内川聖一外野手(30)が盗塁死。終盤の勝負どころで痛恨の走塁ミスを犯し、3大会目で初めて対戦した中米の強豪に屈した。失意の侍ジャパンは、19日に帰国する。

【試合結果】

 内川は泣き崩れた。立ち上がれない。森福に背中を抱えられ、ようやく腰を上げた。静寂に包まれたクラブハウス。山本監督は、選手に柔らかい口調で語りかけた。

 「みんなお疲れさま。本当にありがとう。負けて悔しいけど、みんなが一丸となってここまで来られたのは、やはりうれしい。素晴らしいチームになったと思います。皆も自信を持ってほしい。経験を、これからの野球人生で生かしてほしい。笑顔で帰ろう!」

 痛恨のミスで3連覇は消えた。8回、井端の適時打で1点を返し、内川も右前打で続いて1死一、二塁。打席に4番の阿部を迎えた。願ってもない反撃の機会だったが、2球目に一塁走者の内川が飛び出してタッチアウト。反撃ムードは一気にしぼんだ。山本監督は「重盗に行ってもいいというサイン」と説明。いわゆる自らの判断で盗塁できる「グリーンライト」だった。だが二塁走者の井端はスタートが遅く、すぐ帰塁した。「行けたら行けということだったので(途中で)立ち止まって…」。その動きに内川は気づかず、二塁へダッシュした。顔を上げたのは二塁手前だった。

 プエルトリコの守護神ロメロのモーションの大きさは事前に分かっていた。ただ捕手は強肩のY・モリーナ。重盗では二塁走者のスタートを見てから一塁走者が走るため、三塁ではなく二塁で刺しにくるケースがある。内川にも大きな重圧がかかる場面だった。その状況下で井端から目を切り「やってはいけないこと。全部自分のワンプレーで終わらせてしまった」と責任を背負った。

 グリーンライトに笑い、そして泣いたのだ。2次ラウンド初戦の台湾戦でも1点を追う9回2死から鳥谷が二盗に成功。井端の同点打を呼び込み、延長で逆転勝ちした。これが勢いを生んだ。今大会トップの7盗塁。打席に主砲を迎えても、果敢な走塁で2点差を追いつこうとした。だが、結果的に3連打の勢いは足でそがれた。それでも、山本監督は「一つでも先の塁に行く、この作戦に悔いはない」と言った。

 「走者を置いての打撃が駄目。うまくつながらなかった」。井端が振り返ったように得点圏に走者を置くと、選手は力み、ワンバウンドのボールに手を出した。好機で一本が出ないからこそ、重盗のサインが出たともいえる。今大会を通じても相手投手の実力や状態の良しあしで得点力は変わった。相手を凌駕(りょうが)するだけの力はなかったからだが、侍の切り札である「足攻」が最後はあだとなった。

 山本監督は目に涙をため「素晴らしい選手と野球ができて私は幸せでした」と言った。その裏では睡眠薬をもらって寝るほど悩み続けた。2月14日の代表合宿集合日から一人で食事をしたことは一度もない。首脳陣間での意見交換は連日深夜にまで及んだ。「監督をやらせてもらって勝負の厳しさを味わった。燃えるものがあった」。代表監督選考で迷走し、就任要請があったのは昨年9月28日。チーム編成の遅れにもつながり、大リーグ組の辞退者続出もあって、ベストなメンバーは組めなかった。それでも調子のいい選手を見極める柔軟な起用で国内組だけで準決勝に進出した。

 今度は挑戦者に回る。日本の野球が世界一と信じて疑わないファンがいる。サンフランシスコで味わった屈辱を胸に、ナインは19日に帰国する。歩みを止めてはならない。

 ▼高代三塁走塁コーチ(8回の重盗失敗に)狙えるという判断だった。井端は行こうとしてスタートを切ったけど、止まってしまった。(連動して走る)後の走者が難しい。責められない。

 ▼橋上戦略コーチ(8回の走塁ミスについて)強肩の捕手でも、盗塁できる投手という共通認識だった。前の走者が止まる危険性を頭に入れておく必要はある。

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