西がノーヒッター達成!その時、泣いていたのは…

[ 2013年1月16日 11:05 ]

ノーヒットノーランを達成、ナインに祝福されるオリックス・西

野球人 西勇輝(下)

 昨年10月8日のソフトバンク戦。異様な熱気と強烈な光にオリックス・西は戸惑っていた。4番に座る小久保の第1打席は2回。引退を惜しむファンは主役の登場に合わせて一斉に応援ボードを掲げた。

 「応援ボードがたくさん出てきて目がチカチカしました。光の照り返しや反射が強く、凄く見えづらかったです」

 心理的にも物理的にも難しい局面だったが、真ん中高めのスライダーで二飛に仕留めた。場内アナウンスにより、小久保の第2打席から応援ボードの掲出は減った。

 もちろん、小久保へは全球ストレート勝負の選択肢もあった。ただ、当日、スポーツ紙が報じた「本気でガチで勝負してこい」のメッセージを「真に受けてしまいました」。西は気まずそうに振り返る。「逆に打ってもらおうなんて考えると難しい。無心で投げても、打たれる時は打たれますし」。四球だけは避けた。だからボールが先行すると、スライダーでカウントを整えた。5回は一飛、7回は遊ゴロ。西なりに考え、全力を尽くした結果だった。

 小久保への投球に腐心する一方、快調なペースは続く。4回を終えて12のアウト中、内野ゴロが半分。打たせて取る持ち味を存分に発揮した。記録を意識したのは6回の時点。「安打がまだ0だったんで、粘ったらあるのかなと頭をよぎりました」。ベンチが色めき立ったのは8回。捕手の伊藤だけはあえて何も触れなかったという。ブルペンの不調から一転、全ての球種でストライクを取れる自信があった。不思議な感覚だった。

 最後の打者、松田を遊ゴロに仕留めると、大引が一目散にマウンドへやって来た。伊藤は既に泣いていた。「何で?普通は僕が先に泣くでしょ?」。結局、許した走者は5回1死から松中に与えた四球のみ。スライダーが抜けてしまった。「逆にあの四球があったからこそ、できたのかなと思います。無心でやったことが結果に結びついたのかな」。まだあどけなさの残る屈託のない笑顔で振り返った。

 昨季は夏場の右肩痛で約1カ月半戦列を離れ、8勝3敗、防御率2・78に終わった。右の軸としてフル回転が求められる今季は森脇監督から「15勝と貯金8」というノルマを課された。「バテなければできると思います。昨季は中盤に失速したので、しっかりと走り込みたい」。ノーヒッターの楽しみな一年が始まる。

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2013年1月16日のニュース