“甲子園の土を持ち帰った第1号”…82歳元球児が涙の殿堂入り

[ 2013年1月12日 06:00 ]

殿堂入りし、スピーチする福嶋氏

野球殿堂入り発表

 福嶋一雄さんは「あの時、手紙が届いて…」と涙をこぼした。「甲子園の土を持ち帰った第1号」の逸話をあらためて披露している時だった。3連覇を狙った1949年(昭24)夏の甲子園大会準々決勝。倉敷工に敗れ、甲子園球場を去る時、バックネット前の土を一握りつかんだ。「センチになっていた。無意識の行動だった」

 小倉に帰ると、大会審判副委員長、長浜俊三氏から速達が届いていた。「学校で学べないものを学んだ。君のポケットに入ったその土には全てが詰まっている。人生を正しく生きてほしい」。自宅で新聞紙を広げ、ユニホームを逆さに振ると土が落ちてきた。「野球とは?」に「青春そのもの」。その結晶だった。

 戦後の甲子園に7回も出場。47、48年と連覇。48年は全5試合完封の偉業を成し遂げた。小倉OB会・愛宕クラブの推薦文に「廃墟(はいきょ)のなか、夢も希望も見失っていた社会に明るい話題と生きがいをもたらした」とある。

 当時小学生の作詞家・阿久悠氏はラジオの前で「フックシマーッ」と叫んだ。殿堂入りには戦後復興の象徴としての意味があった。

 ◆福嶋 一雄(ふくしま・かずお)1931年(昭6)1月6日、福岡県生まれの82歳。小倉中(現小倉)のエースとして47年夏の甲子園で九州勢初の優勝。48年夏は史上2人目の全5試合完封で連覇を果たした。早大では東京六大学リーグで通算13勝。社会人の八幡製鉄でも活躍し、引退後は日本野球連盟理事などを歴任した。

続きを表示

2013年1月12日のニュース