福嶋氏、甲子園が人生の糧…土を持ち帰った伝説の人

[ 2013年1月11日 19:47 ]

特別表彰に選ばれた夏の甲子園2連覇の福嶋一雄氏

 野球殿堂入りを決める野球体育博物館の表彰委員会は11日、特別表彰で福岡・小倉中(現小倉高)でエースとして夏の甲子園大会を2連覇した福嶋一雄氏(82)を選んだ。

 名誉ある殿堂入りに、夏の記憶がよみがえる。福嶋氏は「勝った試合よりも負けた試合を覚えている。その悔しさがあって今の自分がある」と言う。敗者が「甲子園の土」を持ち帰る試合後恒例の光景。これを最初に始めたといわれる伝説の投手は当時を思い出して涙をこらえた。

 体を鍛えようと野球を始め、夏の甲子園大会で福岡・小倉中(現小倉高)を2年連続で頂点に導いた。3連覇を狙った1949年は準々決勝で敗れ「これが最後か。(甲子園には)もう来られないのだな」と失意にくれた。

 悲しみの中、無意識でグラウンドの土を手に取っていた。後日、大会審判副委員長からねぎらいの手紙が送られてきた。そこにポケットへ土を入れていたことが書かれていた。ユニホームを確認してみると、確かに入っていたという。思いの詰まったほんの一握りの土は、家にあったゴムの木の鉢に入れた。

 父が戦死しただけでなく、戦争の爪痕が残る中で練習を続けた。7度出場した春と夏の全国大会での経験は何事にも替え難く「人生の糧として、社会人の道を外れないように、会社の仕事や野球界の仕事に役立てている」と感慨深そうに語った。

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