「ついて来ないでくれ」中村GM 報道陣振り払い、福留と極秘交渉

[ 2012年11月29日 11:35 ]

獲得交渉のため、初めて福留と“対面”した阪神の中村GM

 阪神は28日、獲得を目指す福留孝介外野手(35=前ヤンキース)と極秘交渉を行った。

 午前6時55分。太陽が昇り始めた早朝にタクシーで宝塚市内の自宅を出た中村勝広ゼネラルマネジャー(GM=63)は、約1時間後に新大阪駅に到着。待ち構える報道陣に目をやりながら、8時10分発の東京行き新幹線に乗り込んだ。名古屋での接触も予想されたが同駅を通過。新横浜駅にさしかかる頃、突然、GMは動いた。

 同乗した記者の存在に気づいたのだろう。一度、列車から降りた。下りエスカレーターで改札へ向かうそぶりを見せたが、並行する階段とつながる踊り場で急ターン。全速力で駆け上がり車内へと戻った。その間、わずかに1分。記者の追尾を振り切るべく取った決死の逃避行にも思えた。

 終着の東京で下車し、改札を出たところで「もうついて来ないでくれ。詳細は後日発表する」と言い残し、雑踏へと紛れた。すべては、福留側の意向をくむため。日時はもちろん、時間・場所など一切の事前公表を固く控え、最後の最後まで極秘交渉を実現するべく周到に動いた。

 関係者の話を総合すると、恋人との接触は夕方からだった。待望の正式交渉。就任1年目を5位で終えた和田監督は来季再建へ外野陣強化を掲げ、特に強肩の右翼手補強を強く要望。動向に注目を寄せていた福留が米国で自由契約になったことで球団も獲得へ動く方針を固めた。打線強化を目指す中村GMは、新外国人野手の補強を凍結させ福留獲得へ方針を一本化。水面下で接触を重ね今回の対面交渉に至った。

 中村GMが「マネーゲームはできない」と強調していた条件面も最大級を準備。過熱化は避ける一方、2年4億円とも伝わるDeNA側の条件を見極めた上で柔軟に上方修正する方針を球団内で確認し、交渉に臨んだ。この日の徹底した厳戒態勢も、情報が先走ることを嫌がる福留側への配慮。細部にまで誠意を見せている。単身で関西圏へ迎え入れる場合の住環境でも最大限のサポート態勢を用意していて、今回の交渉は福留側の希望を聴き取る上でも貴重な場になったことは間違いない。

 本人同席も大きな要素だ。中村GMは「甲子園球場でプレーしたいという気持ちになってくれるかどうか」と本拠地球場の魅力も交渉時の武器に挙げていただけに直に訴える機会になった。先週には「越えられそうにない山」と表現し、前日27日には「自信はゼロ」と弱気な発言を発していたが、交渉でどんな感触を得たのか。

 29日午後、西宮市内の球団事務所で感触や状況を報告することを、交渉後に約束した。同日はDeNAが交渉を予定。最終的に福留がどんな決断を下すか、注目が集まる。 

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2012年11月29日のニュース