別れの球児 金本氏に一発浴びても女房役は「やっぱり矢野さん」

[ 2012年11月24日 06:00 ]

本塁打の金本氏(左から2人目)のホームインを阻止する藤川(左)と矢野氏

阪神ファン感謝デー

 ファンに愛され、ファンを愛した男の「ラストサプライズ」だった。紅白戦の最終回。火の玉ストッパーがマウンドに向かうと、3万7000人が集まった甲子園全体から地鳴りのような大歓声が湧き起こった。藤川は投球を前に、四方全ての方向に一礼した。

 「(ファンへの感謝の)気持ちはあるけど、会話できないから。形だけでも、あいさつだけでもしたかったから」。大リーグ移籍が決定的とあって、志願の登板だった。プロ入りから14年間慣れ親しんだ甲子園のマウンドに別れを告げたい。9月13日ヤクルト戦以来の雄姿だった。「最後かなと思って」と着用していた黒のビジター用からホームのユニホームに着替えてマウンドに上がった。タテジマが似合っていた。先頭の鳥谷には直球2球で追い込むと、フォークで空振り三振。続く今成も投ゴロ。最大のサプライズが訪れた。

 紅白戦の解説を務めていた矢野燿大氏(スポニチ本紙評論家)がマスクをかぶり、今季限りで引退した金本知憲氏が打席に立った。05年にリーグ優勝した黄金バッテリーで鉄人に挑んだ夢の対決。金本氏に初球の直球を右翼席に運ばれたが、感謝の思いでいっぱいだった。

 「出てきてくれてね。一緒にやってきた先輩だから。あと下柳さんと3人には大感謝です。他の捕手もいいけど、やっぱり矢野さんがいいね」。本塁上で金本を出迎えると、矢野氏と3人で抱き合った。最後は伊藤隼から空振り三振を奪い、勝ち試合を締めくくった。

 「(故障で)シーズンの最後は投げてなかったんでね。今の体調は抜群です」。そう言って、豪快に笑った。最後までファンの前でマイクを握ることはなかったが、藤川の思いは伝わった。感謝と惜別のメッセージが11球に込められていた。

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2012年11月24日のニュース