胴上げは輪の外で…満身創痍の阿部「運命」と選手生命懸けV打

[ 2012年11月4日 06:00 ]

<巨・日>3年ぶり日本一に抱き合って喜ぶ阿部(右端)ら巨人ナイン

日本シリーズ第6戦 巨人4-3日本ハム

(11月3日 東京D)
 異次元Vだ!コナミ日本シリーズ2012は3日、第6戦が行われ、巨人が4―3で日本ハムに勝利。4勝2敗で3年ぶり22度目の日本一を決めた。同点の7回に阿部慎之助捕手(33)が決勝の中前適時打。右膝裏の違和感を訴えていた主将が3試合ぶりに強行出場し、これぞ4番という一打を放った。原辰徳監督(54)はポストシーズンでは苦しみながらも全員野球で頂点に立ち、11度宙を舞った。巨人は8日に韓国で開幕するアジアシリーズに出場する。

 日本一が決まったその瞬間、ナインはマウンドではなく阿部を目掛けて走りだしていた。ファンが、チームが、何より阿部自身がこの瞬間、この場に立つことを願っていた。歓喜の胴上げ。主将は限界に達していた右膝裏を気遣い、輪の一番外で小さく跳びはねるのが精いっぱいだった。

 「超うれしいな。本当に全国の巨人ファンの方々が待ち望んだ日本一だと思うし、御礼申し上げたい。あした(右膝が)どうか分からないし、本当に終わって良かった」

 歯を食いしばり出場を直訴した主将が日本一を決めた。同点に追い付かれて迎えた7回2死二塁。一塁は空いていた。「まともには勝負に来ないだろうなと思った」とボールになる変化球を多投する左腕・石井の誘いには乗らず、好球を待った。3ボール1ストライクからの5球目。外角寄りのストライクゾーンに入るスライダーを捉えた。勝ち越しの決勝打が中前へ。「自分の中で勝負のつもりでいったから打てた。札幌で迷惑を掛けた分、何とか返せたかな」。一塁塁上で最高の慎之助スマイルがはじけた。

 その阿部を信頼し続けたのが原監督だ。お立ち台では、主将に最大級の賛辞を贈った。「本来ならば出場もどうかなというところですが、本人の強い希望もあった。大黒柱として大変価値ある一打。これがジャイアンツ魂、ショー・ザ・スピリットを見せてくれた」。今季の巨人を象徴するシーンが日本一を決める一打となった。

 阿部にとっては「強行」を超えた「特攻」先発出場だった。「びびったら何もできない。多くてあと2試合だし悪くなってもいい。どこか違うところをケガしても、それが運命だし。こんないい機会は何回もない」。第3戦で右膝裏を痛め途中交代。敵地での2試合を欠場し、前日の移動日はかかりつけの治療院に駆け込んだ。電気治療器などで懸命の措置を続け、入念なマッサージ。痛み止めを服用し、練習前のアップを終えた阿部は「いけます」と原監督に出場を直訴した。マスクをかぶり、そして打った。

 今季はケガとの闘いだった。腰痛、両足首痛…。7月11日の広島戦(岐阜)。雨予報の地方開催で、練習前に一番乗りでグラウンドに現れ「きょうは誰もケガしませんように」と両手を合わせた。前夜も祈る気持ちは変わらなかった。「開き直ってやればいいと言い聞かせた」。ギリギリまで出場の道を探り、人事を尽くした阿部を野球の神様は見放さなかった。

 「慎之助のチーム」と指揮官が繰り返した1年間は最高のフィナーレを迎えた。「たぶんみんなが背負ったことのない責任を、俺は背負っていたと思うし。その中で少しはできたと思う。でもそれで満足したら自分の技術も上には行かない」。球界史に名をさん然と輝かせる名捕手へ。そこに足を掛けた阿部は、さらなる高みを目指していく。

 ▼日本ハム・栗山監督(決勝打の阿部について)阿部にきょう出てほしかった。高いレベルで戦って倒さなければ意味がないから。

 ≪長嶋さんらに次いで4人目≫阿部(巨)が7回に決勝の適時安打。第1戦に続き今シリーズ2度目の勝利打点となった。阿部は09年日本ハムとのシリーズでも第5、6戦でV打を記録。シリーズ2度の勝利打点を複数年でマークしたのは、63年と72年の長嶋茂雄、66年と68年の柴田勲(巨)、92年と99年の秋山幸二(西、ダ)に次いで4人目だ。阿部のシリーズ通算打率は・265だが、得点圏では・412とここぞの場面で勝負強さを発揮している。

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