イチ2安打2打点 大ブーイングに「一番気持ち良かった瞬間」

[ 2012年10月9日 06:00 ]

<オリオールズ・ヤンキース>初戦に勝ち、笑顔でジーター(中央)とグータッチのヤンキース・イチロー(左)

ア・リーグ地区シリーズ第1戦 ヤンキース7―2オリオールズ

(10月7日 ボルティモア)
 11年ぶりの舞台は「ダブルマルチ」で発進した。ヤンキースのイチロー外野手(38)は7日(日本時間8日)、オリオールズとの地区シリーズ第1戦に「2番・左翼」で出場。先制の適時二塁打を放つなど2安打2打点をマークし、敵地での白星スタートに貢献した。自ら「ようやくスタートライン」と位置付けた、マリナーズ時代の01年以来のポストシーズン。悲願の世界一への戦いが、いよいよ始まった。
【試合結果】

 歯を食いしばって一塁を駆け抜けた。9回に1点を勝ち越し、なお無死一、三塁。イチローが93マイル(約150キロ)の外角ツーシームを叩いた打球は一塁線に転がるボテボテの投手内野安打となり、4点目をもぎとった。

 「点が入ればいいという打席でしたね。僕の中で。ショートもセカンドも下がっていたので。内野ゴロでもという気持ちはありましたね。すみませんね。普通の答えで」

 雨のため試合開始が2時間26分遅れ、終了は深夜0時12分。貴重な一打を喜ぶ様子はなく、ただ安どの表情で話した。安打でなくてもいい。勝てばいい。イチローが長く求めていた戦いが、11年ぶりに目の前にあった。

 ポストシーズンの雰囲気をイチローらしく堪能した。試合前の選手紹介。ジーターやロドリゲスと並び、敵地でひときわ大きなブーイングを浴びた。それは、認められている証拠。「きょう、 一番気持ち良かった瞬間ですね」。試合開始が遅れている間もクラブハウスで趣味の車の雑誌を読んでリラックス。「あらためて僕、待つことが平気だと思いました。何の苦にもならないし、おいしいものがあれば何時間でも待てるタイプ」と笑みをこぼした。「おいしいもの」とは、待ち焦がれた10月のしびれる戦いだ。

 初回無死一塁の第1打席では、フルカウントから左中間へ先制二塁打を放った。しかし、直後に三盗を試みて憤死。「アグレッシブに行くことは難しいことではないが、結果を出さないとね」。一気に主導権を握る好機だっただけに、反省が口をついた。チーム関係者は「盗塁は彼の判断」と語り、イチロー自身も米メディアの取材に自分の判断だったことを否定せず。それでも「スタートを切らないとサードへ行けないですから。これからも行きたいと思います」とキッパリ言った。

 メジャー1年目だった01年の地区シリーズでは同シリーズ最多タイ記録の12安打、打率6割と大暴れした。11年の歳月がたち、ユニホームも、経験値も当時とは全く違うが、ポストシーズンの大舞台は、あの時と同じようにイチローの心を突き動かした。先勝したことを問われ「そんなのは答えたくないですね」と口元を引き締めた。まだ1勝。名門ヤンキースの一員として臨む世界一への戦いは始まったばかりだ。

 ▽イチローの01年ポストシーズン インディアンスとの地区シリーズは3勝2敗で突破。5試合で20打数12安打、打率.600と打ちまくった。しかし、リーグ優勝決定シリーズではヤンキースの前に1勝4敗で敗退。第4戦では佐々木がソリアーノ(現カブス)にサヨナラ本塁打を浴びた。地区シリーズで活躍したイチローは徹底マークを受け18打数4安打、打率.222と抑え込まれた。

 ≪日本人初≫日本選手による地区シリーズ初戦の2安打は01年マリナーズのイチロー(3安打)、04 年ヤンキースの松井、08年レイズの岩村が記録。2打点は09年の松井が記録しているが2安打2打点は今年のイチローが初めて。ポストシーズン通算18安打は松井の64安打に次ぎ、岩村に並ぶ日本選手2位タイ。また、イチローはポストシーズン通算11試合で全て出塁している。

 ≪オリオールパークで打率・395≫イチローはオリオールパークでは08年4月5日から20試合連続安打。通算打率でもア・リーグの本拠地球場では最も高い・395をマークしている。

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2012年10月9日のニュース