牛島和彦氏が見た栗山監督 人間対人間で選手との絆を築き上げた

[ 2012年10月3日 08:30 ]

リーグ優勝を決め胴上げされる日本ハム・栗山監督

 クリ、おめでとう。絶対的エースのダルビッシュ(現レンジャーズ)が抜け、即戦力と期待した菅野(東海大)との縁もなかった。開幕前の順位予想。西武、ソフトバンクに次ぐ3位にしたが、見事に覆してくれた。素直に謝るしかない。

 同じ1961年(昭36)生まれ。誕生日も私が4月13日で彼は4月26日と近い。引退したのが彼は病気(メニエール病)で29歳、私は故障(右肩痛)で32歳と早かったという共通点もある。話をするようになったのはひと足早くユニホームを脱いだクリが肩を壊した私を取材に来てから。互いに痛みが分かる。体に始まってメンタル面、そして技術…。振り返れば野球に関する話以外したことがないような気がする。

 クリはとにかく勉強熱心。精力的な取材を通じていろんなことを吸収している。私は投手出身で彼は野手出身。いつかタッグを組んでみたいと思っていた。「手伝ってくれないか」。私が横浜(現DeNA)の監督になった2005年に誘ったが、タイミングが合わなかった。他にも数多くの誘いを断り、コーチを経験することなくいきなりの監督就任。不安もあっただろうが、それ以上に自分がやろうとする野球に自信があったに違いない。

 意外と頑固。しっかりした自分の考えを持っている。斎藤を開幕投手に指名。どんなに打てなくても中田を4番から外すことはなかった。信念を持った起用法で思いを選手に伝える。前半は不振を極めた主砲が大詰めにきて大きな仕事をした。最終的には人間対人間。真正面からぶつかっていって選手との信頼関係、絆を築きあげた。「栗山英樹」を短期間でチームに浸透させ、就任1年目の優勝に結びつけたのである。

 「体調はどう?」

 「眠れないんだよ」

 シーズン中に何度かしたやりとりをポストシーズンにもできる。仲間としてうれしく思う。 (本紙評論家)

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2012年10月3日のニュース