城島 美学貫き涙の会見「キャッチャーのまま引退」

[ 2012年9月29日 06:00 ]

涙をこらえ引退会見する阪神・城島

 阪神の城島健司捕手(36)が28日、兵庫県西宮市のホテルで記者会見し、今季限りで現役を引退することを表明した。最後まで「生涯一捕手」を貫き、腰椎椎間板ヘルニアの除去手術を受け、捕手としての復帰のメドが立たなくなった5月に引退を決断していたことを明かした。会見では男泣き。日本人捕手として初めてメジャーでもプレーした城島は、29日のウエスタン・リーグ、オリックス戦(鳴尾浜)で18年のプロ生活に幕を下ろす。

 最後まで「キャッチャー・城島」だった。思い出のシーンを問われ、口にしたのは投手への感謝の思い。グラウンドでは強気で鳴らした男の頬に熱いものが伝った。

 「ピッチャーが獲ってくれたタイトルは全部自分の宝物。一生懸命、投げてくれたピッチャーたちにキャッチャーとして感謝したい」

 今季は24試合の出場にとどまった。突然の発表だったが、決断は早かった。5月22日に腰椎椎間板ヘルニアの除去手術を受けた際に「今季のキャッチャーをするメドが立たなくなった」と引退の意思を固めた。球団には球宴明けの7月下旬に申し入れ、最終的にはCS出場の可能性が消滅した9月中旬に再度、話し合いの場を持ち、意思が変わらないことを伝えた。

 「キャッチャーをできなくなった時がユニホームを脱ぐ時だと若い時から思っていた」

 強肩強打の捕手として、ダイエー初のリーグ制覇や2度の日本一に貢献。06年には日本人初の捕手としてマリナーズに移籍し、09年のWBCでは世界一にも輝いた。まだ36歳。今季は春季キャンプで一塁の守備に挑戦し、1軍でも8試合に出場した。打撃だけなら、まだやれる自信はある。しかし「来年、キャッチャーができないと分かっていて野球をしてしまうと、大好きな野球が嫌いになってしまう。キャッチャーとして、キャッチャーのまま引退します」。会見では「キャッチャー」という言葉を35回も使った。

 阪神移籍1年目の10年は打率・303、28本塁打、91打点と活躍したが、ここ2年はリハビリ生活が大半を占めた。契約期間を1年残しての引退については「高給取りになって2年続けてまともに活躍できなければ、ユニホームを脱ぐとき。そのルールを自分で決めていた」と語った。最後まで自分の信念を貫いた。

 栄光と挫折の入り交じった城島の野球人生がついにフィナーレを迎える。

 ◇城島の主な記録

 ☆強打の捕手 城島の1837安打は日米通算だが、日本球界のみで主に捕手を務めた選手の成績と比較すると、野村(西=2901)ら4人に次ぐ歴代5位に相当。同じく292本塁打は野村の657を筆頭に4位。

 ☆ノムさん以来 03年には63年野村(南海)に次ぐ捕手全イニング出場を果たし打率・330、34本塁打、119打点。捕手の3割、30本塁打、100打点も62、65、67年の野村以来だった。 

 ☆抜群の強肩 盗塁阻止率1位は通算4度あり、01~04年に記録。4年以上連続1位は古田(ヤ)の6年と5年、梨田(近)の5年に次ぐ長さ。

 ☆新記録樹立 03年にはプロ野球記録の捕手1272守備機会と1175刺殺を達成。同年をはじめベストナイン捕手に6度輝いたが、受賞回数は歴代捕手5位タイになる(最多は野村19)。

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2012年9月29日のニュース