阿部主将 V王手弾!体調不良も「監督を胴上げしたい」

[ 2012年9月20日 06:00 ]

<中・巨>4回1死一、三塁、巨人・阿部は中日先発・大野から逆転となる右越え3ランを放つ

セ・リーグ 巨人3-2中日

(9月19日 ナゴヤD)
 巨人が19日、2位中日に3―2で勝ち、優勝へのマジックナンバーを「1」とし、3年ぶりのリーグ制覇に王手をかけた。1点を追う4回1死一、三塁で、MVP(最優秀選手)最有力の阿部慎之助捕手(33)が技ありの右越え25号を放った。阿部の逆転弾で、チームは80勝に到達。巨人は20日は試合がなく、21日のヤクルト戦で勝つか引き分ければ、歓喜の胴上げとなる。負けても中日が阪神に敗れると、優勝が決まる。

 最後は右手1本で払うように打った阿部の打球が右翼ポール目掛け一直線に伸びる。1点を追う4回1死一、三塁。その初球。内角低めの140キロを一振りで仕留めた。

 「最高の結果に自分でも驚いている。ここまでみんなで頑張ってきた。(きょうも)自分たちのやるべきことができて勝てた」

 高い技術が詰まった一撃だった。まずは「目付け」。2回の第1打席で大野の高めの直球を4球もファウル。最後は中前に運んだが、球威に差し込まれていた。高めはポップフライになる確率が高いと踏み、「目線を下げて、積極的にいこうと思った」。簡単なコースではなかったが、狙い通りの低めを完璧に叩いた。もう一つは長嶋茂雄元監督が「2枚腰」と呼んだ「ツイスト打法」だ。主にタイミングを外されたボールに対し、体が泳がされないように、インパクト後に腰を逆方向にひねる。体の開きを抑えることで、バットが最短距離の内側から出るのだ。この特殊な打ち方を体に染みつかせるため、「今では儀式みたいなもの」と本拠地では打撃マシンを相手に、体を開かず三塁方向へファウルを打つ練習を反復する。

 途中で腰を逆回転させるスイングでは、フルスイングと比べて当然パワーは落ちる。一方で、バットを内側から出すことで打球にラインドライブがかかるのを防ぎ、ポール際の打球はファウルゾーンへ切れにくくなる。値千金の逆転弾はそうして生まれた。原監督も「もう私が語るに足らずという素晴らしい打撃」と最敬礼した。

 2試合連続で守った一塁からは何度もマウンドに駆け寄り投手に声を掛けた。「自分の体調が良くなくて捕手ができなくて…。何とか投手を楽にしてあげられればと意識していた」。優しく、時には厳しく。シーズンを振り返り「今年一番怒ったのは沢村かな」と話す。試合に入り込みすぎて、時にサインも見落とした2年目右腕を、期待しているからこそ叱咤(しった)した。連係の声が出ず、守備で交錯した一塁手のエドガーを叱り飛ばしたこともあった。外国人選手だろうと関係なく、勝利のために主将としてチームをまとめ上げてきた。

 これで本塁打はリーグトップのヤクルト・バレンティンに再び4本差。打点も96を数える。リーグMVPはもはや疑いようがない。21日の東京ドームでのヤクルト戦に勝てば、優勝が決まる。「自力で勝って、監督を胴上げしたい。ファンの皆さんには盛り上がっていただき、僕らは冷静に戦う」。阿部らしく厳しく、力強く、勝って決める。

 ≪ノムさんに次ぐ史上2人目なるか≫阿部(巨)が4回に逆転の25号3ランを放ち、今季96打点目。統一球が導入された11年以降の打点上位は昨季中村(西)116打点、同じく中島(西)100打点といるがいずれもパ・リーグの打者。セでは昨季新井(神)の93打点を抜いて最多になった。阿部は07年に101打点を記録。捕手で2度以上のシーズン100打点をマークすると野村(南海=7度)に次いで史上2人目になるがどうか。

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2012年9月20日のニュース