金本 代打で大飛球 「辞めるな!」の甲子園沸かせた

[ 2012年9月13日 06:00 ]

<神・ヤ>9回1死一塁、阪神・金本は中飛に倒れ苦笑い

セ・リーグ 阪神1-2ヤクルト

(9月12日 甲子園)
 甲子園が特別な歓声に包まれた。引退発表から約5時間後。1―2の9回1死、阪神・金本がネクストバッターズサークルへと歩を進める。「金本!おまえを見に来たんや!辞めるな!」。背番号6の登場に最高の盛り上がりを見せた。

 新井が四球を選び、代打で登場。バーネットの5球目の外角シンカーを芯で捉えた痛烈な打球は右中間へ。しかし、捨て身で飛び込んだヤクルトの中堅・比屋根のグラブに収まった。一塁を回っていた金本は穏やかな笑みを浮かべた。試合後は「きょうはもういいでしょう。会見で話したし」と多くを語らなかった。

 歴代10位の通算474本塁打を積み上げてきた。32歳で「トリプルスリー」を達成し、37歳で打撃3部門の自己記録を更新した「鉄人」のパワフルな肉体は、たゆまぬ努力で培われた。入団当初は達川光男・元広島監督が「とても1軍には上がれないだろうと思っていた」と話すほど。しかし、当時はオフの期間でもタブー視されていた筋力トレーニングをシーズン中も継続。筋肉量だけで体重10キロ増を遂げた。プロ入り直後から指導するトレーニングクラブ「アスリート」の平岡洋二代表は「彼だけは休まなかったな」と振り返る。

 広島、阪神の2球団をまたにかけて途中交代すらない連続フルイニング出場は99~10年に「1492」という数字を残した。カル・リプケンの大リーグ記録904試合をはるかに更新した世界記録だ。幾多の故障にも屈せず、04年には死球で左手首を骨折しながら右腕だけで安打を放った。「鉄人」と呼ばれるゆえんだ。今年6月28日に到達した史上7人目の通算2500安打は、大卒選手では初の快挙だった。

 この試合で2年連続のシーズン負け越しが決定。若手への切り替えも考えられる時期だが、和田監督は「後輩たちも、しっかり見て勉強して自分の野球人生につなげてもらいたい」とこれまで通りの起用を続ける方針を示した。9回の打席での思いを聞かれた金本は「全く同じよ」。残り18試合。最後の力を振り絞ってフルスイングする。

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2012年9月13日のニュース