村田、両リーグ最速70勝弾!小久保の美学受け継ぐ放物線

[ 2012年9月3日 06:00 ]

<巨・D>8回2死、巨人・村田は左翼2階席へ決勝の11号ソロを放つ

セ・リーグ 巨人2―1DeNA

(9月2日 東京D)
 巨人・村田修一内野手(31)が2日、DeNA戦で同点の8回に移籍後初の2試合連続本塁打となる11号ソロを放った。左翼2階席へ特大の130メートル弾。村田は6回1死一、三塁でも先制の左前適時打と、チームの全打点を挙げた。優勝を味わいたい一心で巨人にFA移籍した長距離砲が古巣を叩き、チームは両リーグ最速の70勝到達。優勝へのマジックナンバーを「19」に減らした。

 飛距離は十分。ただ、左翼ポール際の2階席に飛び込む際どい当たり。それでも、打球の行方を見届けた村田には確信があった。だから、ビデオ判定に持ち込まれても、顔色一つ変えることはなかった。そして、当初のジャッジ通りに本塁打となった。

 「感触は完璧。よく飛んだね。下からあおればドライブが掛かってファウルになる。きょうは切れなかった。いい打ち方ができたということ」

 同点に追い付かれた直後の8回。しかも4番・阿部が負傷交代した直後で嫌な流れだった。2死走者なし。「本塁打か、三振か。どちらかでいい」。巨人移籍後は「数少ない」と振り返る本塁打だけを狙う打席。軸足の右足にしっかり体重を残し、内角高めの直球を上から叩いた。

 新天地での重圧や重量打線の中で状況判断を求められ、通算262本塁打の大砲が「本塁打の打ち方、もう忘れちゃいましたよ」とこぼしたこともあった。その中で契機となったのが前日の練習前。村田打撃コーチの言葉だった。「長距離打者は天性。その一握りに入っているなら、捨てるのはもったいない」。練習から軸足に体重を残した、かつての打法を反復。早速、前日の試合でも持ち味である右方向への一発を今季初めて放っていた。移籍後、初の2戦連発に「当てにいくことがすべてじゃない。やっぱり本塁打は素晴らしい。その感覚を取り戻して野球がしたい」とうなずいた。

 8月14日、同じ右打ちの長距離砲であるソフトバンク・小久保が今季限りでの引退を表明。強い衝撃を受けた。日大進学時に選んだのが「東都でスラッガーといえば小久保さん」と小久保と同じ型のバットだった。その小久保は飛距離への限界を引退の理由に挙げた。「アーチストらしい放物線が独特でした。本塁打への、飛距離のこだわりは僕にも分かる」。周囲が自分に期待するものも分かる。「みんなが長い時間楽しめる、高く大きな弧を描く放物線が理想」と話す村田。「今シーズンなかった」という美しい放物線を描いたこの日の本塁打には、村田のこだわりと美学が詰まっていた。

 「マジックを減らす野球は初めてだし、いろんな経験をしている。あの時、巨人を選び良かったと思える一年にしたい」。長距離砲の醍醐味(だいごみ)を思い出した村田は、今までにない吹っ切れた表情だった。

 ≪V確率は91%≫巨人が両リーグ70勝一番乗り。巨人のシーズン70勝は50度目になるが、117試合以下で到達するのは09年以来23度目だ。これまでの22シーズンを見ると、優勝20度となっておりV確率は91%。最近は14ケース連続で優勝に結びついている。なお、原監督にとっては02年の114試合、09年の116試合に次ぐ70勝ペース。117試合以下で70勝を3度も達成した巨人の監督は水原(9度)、川上(4度)に次ぎ3人目となった。

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2012年9月3日のニュース