花巻東・大谷 高校生初の160キロ!日本最速にあと1

[ 2012年7月20日 06:00 ]

<花巻東・一関学院>6回2死二、三塁、一関学院・鈴木匡を三振に斬り、吠える花巻東・大谷

岩手大会準決勝 花巻東9-1一関学院

(7月19日 岩手県営)
 「みちのくのダル」が、新たな怪物伝説を打ち立てた。第94回全国高校野球選手権大会(8月8日から15日間、甲子園)の地方大会は、28大会で145試合が行われた。岩手大会では花巻東・大谷翔平投手(3年)が準決勝の一関学院戦で今夏初先発。高校生では史上初、驚異の160キロをマークした。7回を3安打1失点、13三振を奪い9―1で7回コールド勝ち。3季連続甲子園出場を懸け、25日の決勝で盛岡大付と対戦する。また、20日は北北海道大会決勝で遠軽(えんがる)と旭川工が対戦。16大会で57試合が行われる。
【19日の試合結果】

 154、157、159…。電光掲示板に表示される大谷の球速に、1球ごとに歓声とどよめきが増していく。6回2死二、三塁。マウンド上の1メートル93の怪物右腕が、その興奮を楽しむかのように投じた83球目だ。鈴木匡の膝元でうなりをあげてミットに吸い込まれたボールは、夢の大台「160」を計測した。

 「(佐々木洋)監督と目標にしてきた数字だった。うれしい。一番自信のある直球を思い切り投げました」。歴史的事件ともいえる1球に、直後は会心のガッツポーズ。今夏初登板の3回戦・水沢工戦で記録した自己最速を4キロも更新する数字を叩き出した。49球の直球のうち150キロ超は実に40球。最も遅かった107キロカーブとの球速差は何と53キロだ。佐々木監督も「(座骨関節を損傷していた)春先を見ると目標は高すぎたと反省していたけど、クリアできてうれしい」と喜んだ。

 大谷が花巻東に入学した10年春から「160キロ計画」がスタートした。菊池(西武)が09年夏の甲子園で155キロをマーク。指揮官は「雄星の上の投手を育てたいとの思いがあった」。当時143キロが最速だった大谷に「160キロは絶対に投げられる」と熱く語りかけ、二人三脚で肉体改造に取り組んできた。

 県内でも強豪の同校水泳部の練習にも参加。肩甲骨の可動域アップに努めた。今では両手を腰に当てて前方に肘を曲げると、補助があれば両肘がつくほどまでになった。長い腕がムチのようにしなる。だからこその160キロだ。加えて昨冬には1日10杯の白飯を平らげ、体重も10キロ増。大谷は「監督が目標設定してくれたことに感謝したい」と頭を下げた。

 「球速は雄星さんを超えたけれど、甲子園で(09年センバツで)準優勝という素晴らしい成績を残した。甲子園に出て超えたい」。球速だけでなく、チームも日本一に。23日にプロ野球の球宴第3戦が盛岡で行われるため、大谷は中5日と万全の態勢で25日の決勝戦へ向かう。進化を続ける怪物が、剛腕でまずは甲子園切符をもぎ取りにいく。

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