2軍落ちから3カ月半 ドラ1伊藤隼「苦しんで悩んで」プロ初安打

[ 2012年7月18日 11:21 ]

<神・巨>5回、伊藤隼はプロ入り初安打を放ちしてやったりの表情

セ・リーグ 阪神3-4巨人

(7月17日 甲子園)
 阪神・伊藤隼太外野手(23)が17日、巨人戦(甲子園)の5回2死からの第3打席でプロ初安打を右前に運んだ。ゴンザレスが投じた2球目、138キロストレートをとらえ、一、二塁間を破った。通算9打席目で“一歩”を刻んだ。ドラフト1位で入団し、阪神の新人外野手では40年ぶりとなる開幕スタメン出場も果たしたが、4月1日のDeNA戦(京セラドーム)を最後に2軍落ち。あれから3カ月半。苦しい時を乗り越えた若武者が、真のスタートラインに立った。

 バットは折れていた。執念が乗り移り、万感の思いをこめた打球が、巨人二塁手・寺内のグラブのわずか先を抜けた。一、二塁間を破った打球は右前へ。一塁に到達すると、関川外野守備走塁コーチと力強く拳を合わせる。9打席目で出た待望の初安打。プロの“一歩”を甲子園で刻んだ。カクテル光線に照らされたその表情は、激戦の最中に少しだけ緩んでいた。

 「良太さんがホームランを打ってイケイケだったので、積極的にいこうと思いました」

 2回の第1打席はいきなり無死一、二塁の得点機。ゴンザレスの変化球に崩され、空振り三振に倒れたが、バットを全力で振ることで攻略の糸口も少なからずつかんだ。続く第2打席、無死一塁の場面では低めの直球に力負けせず二直。寺内の好捕に阻まれるも、打球の鋭さから直後に響く快音は容易に想像できた。

 開幕3戦目、4月1日のDeNA戦(京セラドーム)以来、3度目の先発出場。5打数無安打で結果を残せず唇をかんだあの日から107日がたった。来る日も来る日も鳴尾浜でバットを振った。午後10時を回っても室内練習場にこもることもしばしば。くじけそうになったこともある。それでも視線を一身に集められる大舞台に立つ日だけを見据え、ただ必死に体をいじめ抜いた。

 「苦しんで悩んで、これだけやっていたというのを後々、笑って言いたいな、と、2軍で中村コーチと話しました。中村コーチもドラフト1位で入って、3打席くらいで2軍に落ちて、20打席くらい打てなかったことがあるそうなんです。自分も同じような境遇だし、よく話しもする。厳しくて視野が広く細部まで見てくれる。精神的にとても助けられています」

 “まな弟子”の練習ぶりに同コーチも「本当によく練習するし、何とかしてやりたいって思う。阪神のドラ1で入って、アイツの方がしんどいよ。でもこれで出てこなかったら、野球の神様なんていないよ」―。降格を告げられたあの日、走攻守すべてを一から鍛え直すと誓った男。ようやく発した快音で、虎党は敗戦の中にも確かな希望を見いだすことができた。

 「記念のボールはもらいました。どうするかはこれから考えます」

 2つ目の空振り三振に終わった第4打席も10球粘った末の凡退。和田監督からも「この1本でどう変わってくるか期待したい。これからもチャンスは出てくる」と積極起用を明言された。少し遠回りしたけど、自らの羽でつかみ取った初めての「H」ランプ。それはこれから幾多も築いていく、伝説の第一歩に過ぎない。

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2012年7月18日のニュース