巨人・長野も一目置く39歳!西郷さん最多タイ14号

[ 2012年7月17日 06:00 ]

<ホンダ・TDK>初回1死二、三塁、逆転3ランを放ち吠えるホンダ・西郷

第83回都市対抗野球1回戦 ホンダ5―3TDK

(7月16日 東京D)
 1回戦3試合が行われた。ホンダ(狭山市)は「ミスター社会人野球」こと、西郷泰之内野手(39)が大会最多記録に並ぶ通算14号の逆転3ラン。ベテランの一発でTDK(にかほ市)を5―3で下した。また、大会最多の54度目出場となった日本生命(大阪市)は、吉原正平投手(22)が今大会初の完封勝利を挙げ、史上5チーム目の大会50勝を達成。JFE東日本(千葉市)とともに2回戦に進んだ。

 東京ドームに快音が響いた。1点を追う初回1死二、三塁。1ボールからの直球を、西郷のバットが叩いた。右翼席中段に飛び込む逆転3ランは、優勝した09年以来、3大会ぶりの一発。94年に杉山孝一(新日鉄名古屋、前東海REX監督)が樹立した通算14本塁打の大会最多記録に並んだ。

 「外野フライでもいいと気楽に入れた。打った瞬間に入ると思いました」。今年8月で不惑の40歳を迎えるベテランは、そう言って笑った。恩人に報いる一発でもあった。前所属の三菱ふそう川崎が08年に休部。引退も考えた西郷の元をホンダの安藤強前監督が訪れた。口説き文句は「都市対抗の(本塁打)記録を塗り替えてほしい」。その言葉は今も支えだ。

 社会人22年目、都市対抗6度の優勝経験を持つ「ミスター社会人野球」。96年アトランタ五輪では銀メダルを獲得した。当時のチームメートでは、巨人・谷、ソフトバンク・松中、ロッテ・井口らが今でもプロで活躍しているが「彼らは別の世界」と言う。不況による廃部が相次ぐ中、西郷は社会人のプライドを背負い、今季も会社の業務と資格試験の勉強を両立させながらプレーする。14本中、9本は金属バットから木製に戻った02年以降に放ったものだ。

 昨季は左脚の負傷で一時は筋力とともに体重を5キロも落とし、同大会も出番はなかった。それでもなぜ続けられるのか。「野球ができない寂しさを知っているから」。04年には本社がらみの不祥事で1シーズン活動を自粛。そして休部を知る男は「楽しむ」ことをモットーとする。

 就任2年目の長谷川寿監督も「みんなが待っていた」と称えた。目指すは3年ぶりの黒獅子旗。西郷は「記録更新で、チームの勝利に貢献したい」と言った。それが野球に対する最高の恩返しだ。

 ▼巨人・長野(07~09年ホンダ所属)初戦突破、おめでとうございます。西郷さんのことは、プロでも知らない人がいないぐらい凄い人です。50歳までやってほしいです。

 ◆西郷 泰之(さいごう・やすゆき)1972年(昭47)8月30日、東京都生まれの39歳。日本学園から三菱自動車川崎(現三菱ふそう川崎)を経て、09年にホンダ移籍。補強選手としての出場を含め、都市対抗6度の優勝経験を持つ。社会人ベストナイン6度、00年には橋戸賞を受賞。96年アトランタ五輪など日本代表経験も多い。1メートル85、88キロ。左投げ左打ち。

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