“脇役”柿沼が主役弾!富士重工・創立記念日に大仕事

[ 2012年7月16日 06:00 ]

<三菱重工神戸・富士重工>10回1死、左越えに勝ち越しソロを放ち、ナインと歓喜のハイタッチをする富士重工・柿沼(右)

第83回都市対抗野球1回戦 富士重工3―2三菱重工神戸

(7月15日 東京D)
 第83回都市対抗野球は15日、1回戦3試合が行われた。富士重工(太田市)は延長の末、三菱重工神戸(神戸市)に3―2で逆転勝ちした。途中出場の柿沼伸彦捕手(29)が10回1死から決勝の左越えソロを放った。左手甲の骨挫傷から復帰したばかり。自ら「脇役」を名乗る伏兵が、富士重工の創立記念日に劇的勝利で花を添えた。16日も1回戦3試合が行われる。

 柿沼は打球も見ずに懸命に走った。二塁ベース手前で初めて本塁打と分かり、ガッツポーズ。大歓声を浴び、興奮で顔は紅潮した。延長10回1死。「割り切って思い切り振った」というバットが、決勝点となる左越えソロを生み出した。

 「裏で支えるのが僕のスタイル」という控え捕手。専大から入社8年目。過去6度の都市対抗でも先発出場は1度もない。3月末の練習試合で左手甲に死球を受け2カ所の「骨挫傷」と診断され、1次予選は棒に振った。

 主将の田辺が打撃に専念するため指名打者に転向。捕手は唐谷と2人だけ。「打撃に集中する田辺に迷惑をかけるし、唐谷にも負担になる。脇役もできないのは申し訳ない」と2次予選から復帰を直訴。痛みがやわらぐと何重にもテーピングし、球を受け始めた。

 この日も8回までブルペンで中継ぎ陣の球を受けていた。同点に追いついた8回、唐谷に代打が出て、出番が回ってきた。10回が今大会予選を通しての初打席。決勝ソロを呼び込んだのは捕手らしい観察力だった。12奪三振と好投する守安に対し、球を長く見極めるために打席の捕手寄りの位置に構えた。だがすでに130球を超え「思ったより球が来ていない」と見るや投手寄りに移動。ポイントを前に置き、フルカウントからの直球を見事に捉えた。

 水久保国一監督も「地道に練習を重ねる選手。練習はうそをつかないことを証明してくれた」と手放しで称えた。明るい性格と謙虚な姿勢。入社4年目に村田博幸前監督から「名脇役でいい」とアドバイスを受け、自分の道を決めた。この日は会社の創立59周年記念日。スタンドでは1万人近い大応援団が見守った。脇役が輝くストーリーは面白い。柿沼の笑顔がそれを教えてくれた。

 ◆柿沼 伸彦(かきぬま・のぶひこ)1982年(昭57)8月31日生まれの29歳。小2から栃木・全西原少年野球クラブで投手として野球を始める。宇都宮学園1年から捕手転向。高3夏に主将として甲子園出場(2回戦敗退)。同期には西武・片岡易之がいる。専大では2年秋に1部昇格。4年では主将を務めた。1メートル75、78キロ。右投げ右打ち。

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2012年7月16日のニュース