イチムネ封じた!ホワイトソックス・ハンバーが完全試合

[ 2012年4月23日 06:00 ]

<マリナーズ・ホワイトソックス>マリナーズ戦で完全試合を達成し、チームメートと抱き合って喜ぶホワイトソックスのハンバー投手(右から2人目)

ア・リーグ ホワイトソックス4-0マリナーズ

(4月21日 シアトル)
 ホワイトソックスのフィリップ・ハンバー投手(29)が21日(日本時間22日)、マリナーズ戦で大リーグ史上21人目となる完全試合を達成した。これまでメジャー通算11勝で完投すら1度もなかった右腕が、イチロー外野手(38)、川崎宗則内野手(30)らを完璧に抑え込み、96球での快挙。27アウトの内訳は三振9、内野ゴロ5、内外野への飛球13だった。大リーグでの完全試合は10年5月29日にフィリーズのハラデーがマーリンズ戦で達成して以来で、ホワイトソックスの選手としては史上3人目となった。

 9回2死、フルカウント。ボールになれば、完全試合の夢は絶たれる。それでも、ハンバーは「あの状況での打者の気持ちを考えれば、真っすぐより変化球」と最後はスライダーと決めていた。目いっぱい腕を振って投じた96球目。ストライクゾーンから大きく外れた上にワンバウンドしたが、27人目の打者、川崎の代打で起用されたライアンのバットは思わず出た。球審の右手が大きく回り、スイングの判定。その瞬間、ハンバーはマウンドに押し寄せたナインに抱きつかれ倒された。

 「自分がこんなことをできるなんて信じられない。絶対に忘れられない試合になる」

 昨季までわずか11勝。先発として1シーズンを投げきったのもメジャー6年目の昨季が初めてで、自己最長イニングは7回2/3。日本では全く「無名」の投手だが、今春3月15日のマ軍との練習試合で川崎に本塁打を浴びたことは記憶に新しい。

 剛球があるわけではない。ただ、腕の振りが一定するため、打者は球種を絞れない。この日も9三振のうち8つを変化球で奪った。特に切れたのがスライダー。ストライクゾーンからボール球になる軌道が有効だった。昨年、4球団目となるホ軍に加入。ドン・クーパー投手コーチとの出会いが転機となった。04年、ドラフト1巡目でメッツに入団したものの、5年間でわずか2勝。鳴かず飛ばずの右腕に、同コーチは「カットボールを捨ててスライダーを覚えろ」と指示。最速94マイル(約151キロ)の直球を生かすのは、変化の小さなカットではなく、大きなスライダーだと助言した。昨季9勝。芽生えた自信が、29歳の右腕を開花させた。

 94年2月、11歳だったハンバー少年は、当時フロリダ州だったホ軍キャンプ地でオジー・ギーエン(現マーリンズ監督)や元NBAのマイケル・ジョーダンらスター選手と触れ合い、大リーガーになることを夢見た。シカゴの自宅では妊娠9カ月の妻が朗報を受けた。「びっくりして(予定より早く)生まれてこないか心配したよ」とハンバー。遅咲きではあったが、大きな大きな花を咲かせた。

 ◆フィリップ・ハンバー 1982年12月21日生まれ、テキサス州ナコドチェス出身の29歳。ライス大から04年ドラフト1巡目(全体3番目)指名でメッツ入団も、05年に右肘の腱を移植手術。06年9月にメジャー初登板を果たした。08年からツインズに移籍し、10年ロイヤルズ時代にメジャー初勝利。11年からホワイトソックスでプレー。メジャー通算56試合で12勝10敗、防御率3.90。1メートル92、95キロ。右投げ右打ち。

 ▼ホワイトソックス・福留(出場機会はなく、ベンチで快挙を見守る)こっちは普通でしたよ。本人が一番緊張していたのでは。最後は(代打ライアンではなく)ムネだったら、ハンバーも嫌だったと思うけどな。

 ▼ホワイトソックス・ベンチュラ監督 最初から最後まで狙い通りに投げていた。でもこんな結果になるとは思ってもいなかった。

 ▼ホワイトソックス・ピアジンスキー(捕手を務め)ワールドシリーズより緊張したよ。

 ▼マリナーズ・ライアン(最後の打者で三振)特にスライダーが良かった。ただ、最後の判定については話したくない。

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