ソフトB 細川 “バント職人”のワケ「押さず、引かず、受け止める」

[ 2012年2月7日 13:50 ]

右手だけでバント練習を行うソフトバンク・細川

 昨年日本一に輝いたソフトバンクには意外なバント職人がいる。昨季、リーグ3位タイ(20犠打以上)の犠打成功率・921を誇ったのが細川亨捕手(31)だ。練習では右手だけでバットを握り、「押さず、引かず、受け止める」をテーマに打球を転がす。たかがバント、されどバント。いぶし銀のプレーを簡単に決められるのには、確かな理由があった。

 細川のバント練習は独特だ。バットを握るのは右手だけ。左手はグリップにも触れない。その右手に神経の全てを集中させると、打球はうまい具合に転がっていく。

 「試合でもバットは右手で持って、左手は添えるだけ。あとは打撃と一緒。投手の指先から放たれたボールに対してラインをつくる。そこにバットを出せばいい」

 細川は昨季34犠打で成功率は・921。一見、簡単そうに見えるバントだが、実際はプロでも難しく、昨季のパ・リーグ全体の犠打成功率は・865だった。一塁手と三塁手が猛ダッシュしてくるシフトをかいくぐって成功させるには、打球を絶妙の強さで転がさなくてはならないからだ。

 西武時代から細川を見てきた立花打撃コーチは「昔は下手だったが、コツを覚えてうまくなった。それは“押さない、引かない、受け止める”だよ」と説明する。その微妙な調整をするのが右手。あえて左手を使わないことで不安定な状態をつくる。そうすればバットを押すことも引くこともできない。受け止めるしかないのだ。普段の練習でその感覚を養っている。

 極意はもう一つある。「バットの先っぽにコツンと当てるだけ」と細川は表現した。バットには必ず芯がある。打撃はボールを芯で捉えることで、強烈な打球を生む。バントは逆で、転がらないように芯を外す。だから先っぽに当てる。

 150キロを超える剛速球、どこまでも飛んでいくようなビッグアーチに目を奪われがちだが、地味ながら職人的要素の強いバント技術もチームの勝利に不可欠な要素といえる。

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2012年2月7日のニュース