新監督対談3 熱血中畑×知性栗山 答えは同じ“選手を信じて”

[ 2012年1月1日 06:00 ]

中畑&栗山 新春新監督対談3

 ――監督になって選手に望むことは。

 栗山 強さですね。うまさじゃなくて強さが欲しい。絶対に戦場からいなくならないぞというものを持ってくれれば、いくらでも練習できる。そこだけは選手に求めたいと思っています。

 中畑 こっちは、まっさらからスタートするって言ってるんだから、選手にとってはある意味、最高の球団、最高のチャンスなんだよね。俺の場合ね、自分はアピールすることによって、他の選手より何倍も、長嶋さんからチャンスもらったわけですよ。下手な選手だったのに。だから前向きでさ、とにかくアピールしてくる選手が好きなんだよな。少々力がなくたって元気があるやつが大好きだって。そこを(選手起用の)判断基準にしたいなというふうに思ってるね。

 ――そうなると監督も元気が必要。

 中畑 そうね、選手に対しては自分が先に裸でいきたいなと思っている。俺ってほら、そういうことできるタイプだから。結構、僕の特典はそのあたりしかないかなって思ってるんでね(笑い)。なるべくそういうふうに自分の姿を、やっぱり中畑のキャラクターはこうなんだっていうものを、ぶれないでいきたいなって思ってる。で、俺はDeNAで声出しまくっていこうと思ってんだ。特に負けてる時に元気出したいね。犬はなぜ吠えるか、弱い犬ほどよく吠えると言うじゃん。選手にも“負けてる時に元気出そう!”って合言葉にしたい。前向きに前向きにという姿でトライする選手が何人もいればチームは明るくなってくれると思うから。やっぱり元気のないチームにファンはついてこないよ、間違いない。

 栗山 僕も中畑さんみたいにやっぱり明るさとか元気さとか一番チームに必要だと思っていますけど、僕がガーッと中畑さんみたいにカラオケとか歌っちゃったら違うじゃないですか。何か己を知らない感じじゃないですか。

 中畑 でも、たまにはやった方がいいよ。そこで我慢しない方がいいって。“ああ、こんな面もある”っていう魅力に変わるから。

 栗山 そうですね。

 中畑 ところでクリさあ、よくさあ、監督って(注4)“選手を信頼しても信用するな”っていう表現をするじゃない。どうしても理解できないんだけどね。

 栗山 言いたいことは何となく理解はできるんですけど。

 中畑 そりゃあ使う以上はさ、絶対的に信じてやることでスタートしなかったら…。だから、この言葉に凄く矛盾を感じるようになっちゃうんだよね、俺は。

 栗山 本当に監督をやってみると感じるのかもしれないですけどね。

 中畑 俺はその言葉を覆してみたいなと思うのよ。

 栗山 使う以上は失敗するイメージを僕も持ちたくないですね。もし失敗したら俺が悪いというぐらいの感じでいきたいですよね。

 中畑 だって、ケツ拭くのは監督なんだから。その気持ちを持って選手を送り出さなかったら、選手だって力以上のものを出そうっていう気構えになってくれないと思うんだよね。
 栗山 そう思います。僕は最後まで諦めないって言葉を使っているんですけど、こいつら絶対できるんだと。まだまだとかいろんなことを言われても、僕だけは最後まで思い続けてやることが、諦めたくないなってところなんです。

 中畑 選手時代って、本当は不安だったじゃん。使ってもらっている時だってさ。その時に“おまえが行くんだ!”って長嶋さんから言われた言葉がいまだにこびりついてるんだね。代えられるんじゃないかって気持ちの中で、“何だ、その弱々しい目は!”ってさ、“おまえが行くんだ!”って言い切ってくれた。もうスカーッとして全部の悩みが吹っ飛んじゃってさ、気持ち良く打席に入れたもんね。

 栗山 力を発揮させてくれるわけですよね、その信頼感が。

 中畑 うちの、あの選手が打ってくれるんだっていうふうにみんなが思ったら絶対に打てるんだよ。そのパワーって伝わるんだよね。それがチームだから。

 (注4)辞書によると、信頼とは「信じて頼ること」、信用とは「信じて任用すること」。

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2012年1月1日のニュース