新監督対談2 理想の監督像は…栗山「三原脩さんにあこがれ」

[ 2012年1月1日 06:00 ]

中畑&栗山 新春新監督対談2

 ――ところで、せっかく2人そろったので、お互いに現役時代からの印象は。

 栗山 僕は、中畑さんの最後ですよね。ホームラン打っての終わり方(注2)。やっぱりプロっていうのは、ここ一番で何ができるかっていうのを中畑さんの姿に教えてもらいました。トータルももちろん大事なんだけど、ここ一番の大事な時に何ができるかが男の大事な勝負。アテネの時も感心させられました。中畑さん、凄く苦労されてましたけど、僕は取材者として、ミスターから受け継いで、一番中途半端な大変な状態の中で、チームを率いていた姿を見てきたのでね。ですから、本当に僕に一番欠けている勝負強さという部分、それは逆に身につけて選手に迷惑掛けないようにしなきゃって思っています。

 中畑 クリはいい子だったねえ。頭のいい子でさ、人間的にもいい子でさ、笑顔がいい子でさ、これぐらいでいい?正月だし。

 栗山 ありがとうございます。

 中畑 やっぱり国立(大学卒)の選手ってさ、野球界にとってプロに入ってくる数少ない背景を持った選手。それを感じさせてくれたよな。俺たちは肉体労働者だけれども、クリの場合には頭脳プレーヤーとしての姿だったから説得力があったよ。それに、がむしゃらにどんなボールでも食らいついていって出塁することが大切だって姿を見せつけたよね。相手の嫌がる野球ということを考えてやってきた選手だろうなっていう印象が、俺の中にはあった。

 栗山 っていうか、中畑さんとか、長嶋さんていうのは野球の王道ですよね。本当に一番大事なものを大事にして、野球の真っすぐなラインじゃないですか。そういうのはやっぱり僕らも、そういう方向の軸はぶれちゃいけないなって凄く思いますよね。やっぱり野球は楽しいものだし、やる人たちが楽しくないと、見てる方も楽しくないですよね。

 中畑 そう。俺、歌っている時、一番それ思う。ちょっと尺度が違うけどね。伝えたいものは分かるでしょ?

 栗山 そうですね。

 ――理想の監督像は。

 栗山 いろいろ取材とか勉強とかしていくと、三原脩さん(注3)がやろうとしたことっていうのは僕は凄く憧れるところが多かったですね。例えば“言葉の魔術師”と言われたところ。本当にこの場面でこの言葉が出せるんだっていうことで、選手がやる気になって。知識といい、教養といい、選手は本当にこの人の言うことを聞くしかないんだっていうモチベーションを上げてもらったっていう。後は(戦術面でも)先入観がなかったということですかね。ワンポイントリリーフをつくったり、当て馬(偵察メンバー)をつくったり、全部、三原さんが最初ですよね。

 中畑 クリに合ってるね。イメージ湧くよ。栗山野球というのは三原野球っていうのと、何かダブってみえるような感じがするよね。

 ――中畑監督の場合、藤田元司監督がいたからという部分があった。

 中畑 俺、どっちかっていうと、引退後は歌手になりたかったんだよ。十分その才能はあるわけだから(笑い)。でも、藤田さんに“うわあ、監督業って素晴らしい仕事なんだな”って思わせてもらった。采配はもちろん、選手への声の掛け方、裏方さんへの気遣いも行き届いていた。物凄く気配り、目配り、思いやりがある人なんだよね。そういう時、物凄く格好良く感じるのよ。わあ、この人すげえ幅のある人だなって。実は、藤田さんが最初に監督をした時は長嶋さんが解任された後だったから、みんなあまり良く思ってなかったんだけど、すぐに藤田さんの人となりにほれちまったね。そして俺が現役を辞める時、藤田さんからも“清、いつか巨人の監督として戻ってこい”と言われてね。その夢が膨らんでいったっていうかさ、“ああ、こういう監督になりたいなあ”っていうのが目標になっていった。藤田さんの存在はでかかったね、俺にとって。

 栗山 藤田さんは本当に素晴らしかったって僕らも聞きます。

 中畑 チームって、やっぱり家族じゃない。だから俺も“中畑一家”つくりたいなって思って。(東日本大震災が起こった)昨年なんか特に“絆”を大事に思った部分があるんだけど、チームもそれがなかったら本物はつくれないって。持ってる個人の力なんか鼻くそなんだからさ。藤田さんは誰かを生かしても、誰か死ぬ人をつくらないっていうね、それが藤田野球の原点だったんだよな。

 (注2)1989年の近鉄との日本シリーズ。3勝3敗で迎えた第7戦で、6―2の6回に代打で出場し、吉井理人(現日本ハム投手コーチ)から左越えソロ本塁打。同戦が中畑監督の現役ラスト試合だった。

 (注3)巨人、西鉄など5球団で監督を務める。監督として3248試合出場は日本プロ野球記録。周囲の予想を超える選手起用などが「三原魔術」と称された。

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