TBS2年越しの売却 否決あり得た綱渡り

[ 2011年12月2日 06:00 ]

横浜球団買収断念の会見を終え一礼し会場を後にするトステム・溝口和美取締役副社長執行役員(左)と住生活グループ・筒井高志取締役副社長執行役員

 横浜球団の親会社だったTBSホールディングス(HD)にとっては2年越しの売却となった。そもそもの苦難の始まりは昨年10月末、住宅設備大手の「住生活グループ」との交渉が合意寸前で破談したからだった。

 TBSHDは水面下で複数の企業と交渉していたが、身売り先として売上高で1兆円規模を誇る住生活グループは飛び抜けた存在。企業の安定性も申し分なく、球界全体の受け入れ態勢が進んでいたが、同社が横浜からの本拠地移転を希望したことが障害となった。

 その住生活以外の候補だったのがDeNAと旅行業界大手のHIS。今年に入ってもTBSHDは両社に絞って売却交渉を続け、9月に入って本格化した。同21日、HISの平林朗社長は「うちは権利を失った」と買収を断念。同社の買収額はDeNAと大差はなかったが、TBS関係者は「DeNAのほうが先に名乗りを上げたことが決め手」と語る。またDeNAの球団経営に対する熱意も強く、そのころには売却先として一本化された。京浜急行電鉄グループとガス事業のミツウロコを中心とした地元企業連合が名乗りを上げたと報道されたこともあったが、買収額が低過ぎた。

 TBSHDの井上弘会長は各球団のオーナーへの根回しに奔走した。本業の不振から球団経営を維持するのはすでに限界。「どうしても売らなければならない。うちがもう1年保有することは無理なんです」と頭を下げ回ったという。01年オフ、TBS(当時)への身売りに道筋をつけたのが当時の巨人・渡辺恒雄オーナー(現球団会長)。「俺が間を取り持ったけど、迷惑をかけた」と話すなど、TBSHDの売却交渉を後押ししてきた。

 しかし、DeNAと同じIT企業で同社の経営内容に不安を抱く楽天の三木谷浩史会長は「不適切」と判断。反対の姿勢を強硬に示し、パ各球団、そしてイニシアチブを握る渡辺会長にも訴えかけたという。11月23日に新しく就任した白石興二郎オーナーがDeNAの球界参入に態度を保留したのもうなずける。最終的には巨人が反対に回ることなく、セ・リーグが賛成で一致。パ各球団も「負け戦」には乗らなかった。仮に承認が否決された場合、継続保有しなければならなかったTBSHDにとってはまさに綱渡りの売却劇だった。

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2011年12月2日のニュース