清武氏 勝訴「難しい」 弁護士が見た“巨人内紛劇”

[ 2011年11月26日 12:27 ]

「渡辺恒雄球団会長によるコンプライアンス違反と不当解任について」の会見を行った清武英利氏

 巨人からの解任通告を違法、不当のものとして清武英利前球団代表兼ゼネラルマネジャー(GM=61)が、12月にも訴訟を提起するとした問題について、前東京地検検事でもある大澤孝征弁護士(66)が、今後裁判になった際の見通しなどについて語った。

 清武氏の主張は心情的には理解できるし、5つの解雇理由に対する反論もそれぞれ筋は通っている。ただし、従来の会社法の見地から言えば、正当性が認められるかは難しいのではないか。

 清武氏の場合、従業員の不当解雇とは次元が違う。取締役という一定の立場にあった以上は、会社に対する忠実義務や取締役としての責任を果たすことが求められる。清武氏に言わせれば、渡辺会長の一連の言動が不当であり、読売巨人軍という会社に対しては忠実を守り、そのために起こした行動ということなのだろう。

 しかし、大株主が会社を支配する資本主義社会では、大株主の意向というのはやはり無視できない。少数派の主張がたとえ正当であったとしても、それが認められてしまっては株式会社は成り立たない。

 取締役の地位にあった清武氏が、社内のルールや手続きに乗っ取ることなく告発会見を開いたことは、コンプライアンスの観点からも超法規的な行動といえる。その超法規的な行動を裁判所が法的に認めるとしたら、よほどのケース。清武氏にしてみれば、今回は「よほどのケース」に当たるのだろうが、第三者的には、取締役の一人が会社の統制を乱したと取られても仕方ない。

 清武氏が裁判で勝つのは難しいと言わざるを得ない。むしろ、清武氏にとっては「巨人の内部はおかしい。こんなことがまかり通っている」ということを世間に訴えることができたことに意味があるのではないか。ブランドイメージを傷つけられた巨人にとって、今回の騒動が大きな痛手であることは間違いない。(大澤孝征法律事務所)

 ◆大澤 孝征(おおさわ・たかゆき)1945年(昭20)7月14日、神奈川県生まれの66歳。湘南―早大法学部。卒業後の69年9月、23歳で司法試験合格。72年に検事任官。79年で退官し、第1東京弁護士会に登録。弁護士として活躍を始める。主に少年法や家事事件を専門とし、刑法・少年法・監獄法改正問題対策委員、東京家庭裁判所家事調停委員、日本弁護士連合会司法改革実現本部委員などを歴任。テレビのワイドショー番組などにも多数出演。
 

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2011年11月26日のニュース