イチロー184安打“終戦”「なぜか晴れやかですね」

[ 2011年9月30日 06:00 ]

<マリナーズ・アスレチックス>ファンにTシャツ入りのバッグを投げるイチロー

ア・リーグ マリナーズ0―2アスレチックス

(9月28日 シアトル)
 イチローは笑っていた。マリナーズのイチロー外野手(37)は28日(日本時間29日)、アスレチックスとの今季最終戦で無安打に終わり、シーズン184安打で全日程を終了した。11年連続200安打はならず。しかし記録の重圧、苦しみ抜いたシーズンの呪縛から解放され、その表情は穏やかだった。この日、来年3月のアスレチックスとの日本開幕戦の開催が正式発表。契約最終年となる来季は、日本の地から新たなスタートを切る。

 誰の人生にも区切りはある。天才打者も例外ではない。200安打の記録がストップ。それは同時に、本人にしか分からない重圧からの解放を意味した。イチローはすがすがしい笑みを浮かべて穏やかに話し始めた。

 「なぜか、晴れやかですね。200が一応区切りがついた。ようやく続けるということに追われることが、もうなくなったので、ちょっとホッとしています」。11年目で初の無安打に終わった最終戦。安打数は184で、打率も・272。オリックスでレギュラーに定着した94年以降、初めて3割を切った。「この日を想像すると“凄く動揺する自分が出てくるかな”と思ったのですが、それもない。寂しいとかいう感じでもない」。偽らざる思いだった。

 「4月に結果が出ることの難しさ。その判断が凄く難しかったし、誤った判断だった」。例年なら準備期間とする4月に過去最多の39安打。これが逆に足かせとなった。本来なら長いシーズンを見据え打撃の微調整をし、課題を探す1カ月。その修正点が、結果が出たことでぼやけてしまった。5月は打率・210。これまでとは逆のパターンで、6、7月も打率2割台に低迷した。「長い期間まとめて(不調の波が)来たわけだから、なかなか難しい」。5月にオープンスタンスに変更。最終的にはバットのヘッドを寝かせる04年の形に戻した。試行錯誤。「支えたのは元気な体。折れた心を完全に体で支えていた」と振り返った。

 「やっぱり200ってすげえなって。難しいとずっと感じてきて、ギリギリのところでやってきた」。高いレベルを長く維持する困難さ、苦悩。加えて今季は、アスレチックスなど同地区球団は対策として内野手の守備位置を前に出した。内野安打は37本。昨季の59本から激減するなど、外的要因も重なった。

 来季は5年契約の最終年。38歳という年齢とも戦いながら、13年以降の再契約を見据えて結果が必要となる。「(200安打の)可能性を生み出せる状態でありたいと思う」。記録が途切れた今、モチベーションをどこに求めるのか。ア軍との日本開幕戦も正式決定したが「シーズンが終わったばかり。来年はかなり遠い未来の話だから、今は答えられない」。生まれ故郷から再スタートする12年目。それでも、数字と伴走するかのようにバットを振り続ける姿だけは変わらないだろう。

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2011年9月30日のニュース