福島の旧友の分も…長尾V打で花咲徳栄が優勝

[ 2011年7月28日 06:00 ]

<花咲徳栄・春日部共栄>5回1死満塁、花咲徳栄・長尾は勝ち越しとなる左前安打を打つ

埼玉大会決勝 花咲徳栄2-1春日部共栄

(7月27日 県営大宮)
 第93回全国高校野球選手権大会(8月6日から15日間、甲子園)の地方大会は27日、決勝15大会を含む28大会52試合が行われた。埼玉大会では、花咲徳栄が福島県郡山市出身の長尾駿内野手(3年)の決勝打で春日部共栄を2―1で下して、10年ぶり2度目の甲子園出場を決めた。
【埼玉大会結果 27日の結果】

 遠く離れても故郷を、そして友を思う気持ちは変わらない。福島県郡山市出身の長尾が、旧友との約束を胸に決勝打を放った。

 「自然とガッツポーズが出ました。これで甲子園出場が決まったと報告できる」

 5回、1―1の同点としてさらに1死満塁の好機で、スライダーに体勢を崩されながらも三塁手の頭上を越す左前適時打。チームを10年ぶりの甲子園出場に導いたその表情には自身のものだけではない喜びがにじみ出ていた。

 長尾は福島第1原発事故の影響で転校が相次ぐなどして唯一連合チームを組んだ「相双連合」の4番・中村と中学時代に「南東北ヤングベースボールクラブ」で中軸を組んだ間柄。その中村は14日の喜多方との初戦でチーム唯一の得点となる本塁打を放ったが、1―8の7回コールド負け。「俺たちの分まで甲子園に行ってくれ」。電話口からは中村の無念さが伝わってきた。その思いをバットに込めた。

 長尾の家族らに被害はなかったが、震災直後は「福島では野球ができていないのに、自分だけやってていいのか」と思い悩んだ。転機が訪れたのは5月。岩手・水沢OBの村上直心(なおし)コーチが、高校時代に岩手・高田高校の佐々木明志監督に指導を受けていた縁で岩井隆監督、広岡主将らが陸前高田市の同校を訪問し、野球道具を手渡した。被害状況を聞いた長尾ら部員は「野球ができることに感謝しよう」と練習により一層打ち込むようになった。

 「大会が終わったら中村と会う約束をしてるんですよ。まだ先になりそうですけど」。野球が満足にできなかった仲間の分まで。この夏は甲子園で大暴れする。

 ◆長尾 駿(ながお・しゅん)1993年(平5)8月23日、福島県郡山市生まれの17歳。郡山七中時代に所属した「南東北ヤングベースボールクラブ」では世界大会に出場。花咲徳栄に進学し、今春から二塁手の定位置を獲得。将来の夢は野球の指導者。趣味は読者。1メートル73、68キロ。右投げ右打ち。

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