感謝を胸に…震災から120日「特別な夏」開幕!

[ 2011年7月10日 06:00 ]

「あきらめない街・石巻!!その力に俺たちはなる!!」の横断幕を手に堂々の入場行進をする石巻工ナイン

 第93回全国高校野球選手権大会(8月6日から15日間、甲子園)の宮城大会が9日、開幕。11日に東日本大震災から4カ月を迎える中で、被害が大きかった東北3県のうち岩手、福島に先立って「特別な夏」がスタートした。Kスタ宮城で行われた開会式では77校が入場行進。選手宣誓では柴田・佐藤裕次主将(3年)が力強く宣誓した。順調に日程を消化すれば28日に代表校が決まる。この日は宮城を含めて26大会が開幕した。

【宮城大会組み合わせ 7月9日の試合結果】

 あれから120日がたった。震災時に粉雪が舞ったみちのくの空にはしゃく熱の太陽が輝く。梅雨の合間の快晴は球児たちへの贈り物か。開会式の選手宣誓。柴田の佐藤主将は79秒間のメッセージに思いを込めた。

 「被害を受けた多くの方々は普通に生活ができていたことが、どれほど幸せだったかをあらためて実感していると思います」

 感謝の気持ちを胸に刻み、力強く生きる宮城の球児たちを代表しての言葉だった。

 3月11日。練習中に被災した。同校は無事だったが、宮城県亘理町の佐藤の自宅は津波にのみ込まれた。家は全壊。一時は知人の車の中で過ごした。その後は避難所生活で、仮住まいのアパートに引っ越したのは4月上旬。再びボールを握ったのは4月20日だった。「野球ができなかったから野球ができる喜びや人々の温かさを感じ、下を向いちゃいけないと切り替えられた」。折れかけていた心を野球が支えた。

 佐藤のユニホームは津波で流された。残ったのは部室にあったグラブとスパイクだけ。開会式は前チームの副主将・山田大生(たいき)さんのユニホームを借りた。そのユニホームで堂々と行進し、しっかり前を向いて宣誓。グラウンドに立つ誰もが同じ思いだった。被災した14校すべてが開会式に参加し、行進では石巻、石巻工、宮城農の3校が横断幕を持った。「感謝を力に」の言葉を仲間と携えて行進した宮城農・佐藤主将は「支援物資がなければ野球ができなかった。被災をハンデと思わず、被災した人たちを励ますようなプレーをしたい」と言った。

 震災の犠牲者を悼み、黙とうもささげられた。スコアボードには各参加校から寄せられたメッセージが表示された。それぞれの特別な思いを白球に込める夏。宮城から魂のメッセージは全国へと届き、被災地に夏の球音が響いた。

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