松坂 靱帯「断裂」だった…手術決断、復帰まで1年以上

[ 2011年6月4日 06:00 ]

球団首脳陣との会談のため、球場入りするレッドソックス松坂

 レッドソックスの松坂大輔投手(30)が、右肘靱帯(じんたい)への腱移植手術(トミー・ジョン手術)を受けることが2日(日本時間3日)、正式決定した。この日、本拠フェンウェイ・パークでテリー・フランコナ監督(52)ら球団首脳と会談を行い、球団からも了承を得た。3日(同4日)に正式発表される。早ければ来週中に手術を行うが、復帰は来年7月以降の後半戦までずれ込む可能性が大。松坂は野球人生の重大な岐路を迎えた。

 セオ・エプスタインGM、フランコナ監督を交えた話し合いは約1時間に及んだ。午後1時すぎに現れた松坂は、硬い表情で報道陣に会釈だけをして球場を後にした。

 大リーグ関係者は「話し合いの後に球団がヨーカム医師に確認した上で最終了承したようだ」と明かした。松坂が手術へと気持ちが傾いたのは、先月31日にロサンゼルスで検査を受けたルイス・ヨーカム医師の言葉だったという。右肘靱帯の損傷の程度がひどく、「断裂」という見解だった。治療だけでは完全には回復しない。1日にボストンに戻り、倫世夫人とも話し合って手術を決断した。指揮官が「(球団とヨーカム医師の)診断に違いはない。手術をしないで治そうとするのが自然の流れ」と話すなど、治療優先方針を示していた球団も松坂の意向を尊重するしかなかった。

 手術は早ければ来週に行われる。執刀医にはヨーカム医師だけでなく、同じく肘の権威として知られ、昨年4月には田沢の手術を執刀したジェームズ・アンドリューズ医師の名前も挙がる。手術は左手首から、手首を動かす長掌筋(ちょうしょうきん)の腱を取り、肘に移植する形がとられる。右肘には20センチ以上の傷痕が残る。

 30歳。初めて自身の体にメスを入れることになった松坂だが、今回の靱帯断裂には複数の要因が考えられる。肘が下がって「手投げ」になっていた点や、フォークのように縦に落ちるストレートチェンジが負担をかけたこと。高校時代から第一線で投げ続けてきた勤続疲労もあるだろう。それでも「中途半端な形で戻れば、その方がチームに迷惑がかかる。手術をすれば時間がかかることも分かっている」との覚悟を示していた松坂は、早くも先を見据えて動きだした。この日は球団トレーナーとリハビリの大まかな流れも確認。同じ手術を受けた大リーガーや日本球界の選手の意見を聞きながら、リハビリに立ち向かう。

 トミー・ジョン手術は完治まで8~12カ月を要するとされる。同様の手術を昨年4月に受けた田沢のマイナー戦復帰は今年5月20日。約13カ月かかった。それだけに松坂も、メジャー復帰は来年夏の後半戦開始前後にずれ込む可能性が高い。復帰までの長い道のり。高校時代からアマ、プロ野球界を引っ張ってきた右腕に、試練の時が訪れた。

 ▽トミー・ジョン手術 損傷した靱帯を切除し、他の正常な腱の一部を移植する肘の再建手術。74年にドジャースのトミー・ジョン投手が左肘の腱を断裂した際に、チームドクターだったフランク・ジョーブ博士が初めて行ったことから名付けられた。ジョンは46歳まで術後15年間もプレー。通算286勝をマークした。手術の際は利き腕と反対側の手首にある長掌筋の腱を利用するケースが多い。現在の成功率は90%前後といわれ、実戦復帰まで8~12カ月を要するとされる。

 【松坂これまでの経緯】

 ▼4月29日 マリナーズ戦で球速が突然落ち、5回途中で緊急降板。右肘の張りと診断された。
 ▼5月4日 エンゼルス戦でメジャー5年目で初の中継ぎ登板も負け投手に。
 ▼16日 オリオールズ戦に登板も、5回途中5安打5失点で降板。試合後の会見で「腕は全く振れなかった」。
 ▼17日 MRI(磁気共鳴画像装置)検査の結果、右肘靱帯に損傷が見つかる。
 ▼18日 前日にさかのぼって故障者リスト入り。2週間後の再検査まで投球禁止の措置も。
 ▼24日 治療目的のために緊急帰国。
 ▼30日 再渡米しロサンゼルス入り。
 ▼31日 ロサンゼルス近郊でヨーカム医師の診察を受ける。
 ▼6月1日 ボストンへ戻る。
 ▼2日 本拠フェンウェイ・パークでフランコナ監督らと会談し、手術が決定。

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