由規 地元仙台で天国の先輩に白星を…「勝つのが使命」

[ 2011年5月20日 06:00 ]

楽天戦に向け調整する由規

 今回ほど帰郷を待ちわびたことはなかった。ヤクルト・由規が20日の楽天戦(Kスタ宮城)の凱旋登板を控え、札幌空港から仙台入りした。

 3月11日の東日本大震災後、初めて地元の宮城県仙台市に戻り「何となくホッとしている」と話したが、目の前に広がった現実は想像以上だった。

 空港から宿舎へのバスで仙台東部道路を北上し、津波の被災地を目の当たりにした。がれきの撤去は進むが、まだ陸上に漁船が取り残され、車が田んぼに突き刺さる。「ちょっと言葉が出ない。通ったことがある道が変わってしまった。現実は受け止めなきゃいけない」と表情を硬くした。

 地元登板は過去2度とも楽天・田中と投げ合い1勝1敗。3度目の対決は特別な思いを胸にマウンドに上がる。大震災で仙台市内の実家は被災し、仙台育英でバッテリーを組んだ1学年上の先輩・斎藤泉さん(享年22)を亡くした。今回熱望した凱旋登板は雨天中止が2試合続いたために実現したもので「自分の使命。自分の中でも何か持っている感じはするし、勝たなくちゃいけない」と意気込む。小川監督も「マー君と由規が投げ合うことで、見ている方々が(明るい気持ちになる)時間を持ってもらえれば」と勝敗を超えた投げ合いを期待した。

 この日調整を行ったKスタ宮城は思い出の地。仙台育英2年夏の県大会決勝で東北と激突して延長15回引き分け、再試合で優勝を決めた。その2試合で捕手を務めたのが、斎藤さんだった。今回は亡き先輩の両親を招待している。「とにかく笑顔を取り戻してもらえるように、僕が何とか…」。震災の痛みを知る由規だからこそ、ファンの心が動くような投球を。21歳右腕が重い使命を背負って故郷のマウンドに立つ。

 ≪過去の由規VS田中≫初対決は、09年5月20日(Kスタ宮城)。仙台出身の由規はプロ入り後、初の地元凱旋登板で7回1失点と好投したが、田中が2安打完封で先輩の貫禄を見せた。2度目の対戦となった昨年6月13日(Kスタ宮城)は、由規が7回2/3を5安打1失点で勝利投手に。田中は7回まで無失点も、8回に押し出し四球などで2失点。2人の対決は1勝1敗となった。

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2011年5月20日のニュース